フランチャイズと業務委託の違いは何? それぞれのメリット・デメリットとは

独立や開業には、いくつかの方法があります。自分で一から起業する、フランチャイズ加盟店として開業する、また、企業と業務委託契約を結んで独立開業するケースもあるでしょう。

では、フランチャイズと業務委託はどのような点が異なるのでしょうか。ここでは、混同しがちなフランチャイズと業務委託の違いを解説し、それぞれのメリットやデメリットをご紹介します。独立開業を検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

■フランチャイズと業務委託の違い
<フランチャイズとは>

フランチャイズとは、フランチャイズ本部となる親企業にロイヤリティを支払い、看板やブランド名の使用権、経営ノウハウなどを提供してもらうビジネスシステムです。加盟店(フランチャイジー)になるには、本部(フランチャイザー)とフランチャイズ契約を結ぶ必要があります。

フランチャイズビジネスにおいて、本部は商品開発や仕入れルートの確保、広告宣伝、ブランド価値の維持・強化に努めます。また、人材育成や店舗運営のためのマニュアル作成も本部の仕事です。

加盟店は、本部が用意してくれたこれらの環境を活用することで、手間や時間をかけずにビジネスを軌道に乗せ、経営や店舗運営に専念できるのです。
<業務委託とは>

業務委託とは、企業が行っている業務の一部を「委託」という形で請け負うことです。個人が請け負うケースだけでなく、規模の大きな仕事になると、法人が請け負うこともあります。委託を請け負った場合は、「業務委託費」として報酬を受け取ります。

個人や法人が業務委託で働くには、企業との間で「業務委託契約」を結びます。この業務委託契約には雇用関係がないため、委託側と受託側は対等な関係です。

なお、業務委託契約には「請負契約」と「委任契約(準委任契約)」があります。請負契約は、委託された業務の「成果物」と引き換えに報酬が支払われます。請負契約を結ぶことがある職種としては、ライターやデザイナー、警備員(安全という無形の成果を提供する)や営業(売上によって対価が発生する)などが挙げられます。

「委任契約(準委任契約)」は、契約期間中に遂行した「業務」に対して報酬が発生します。「委任契約」と「準委任契約」は同じ契約形態ですが、「委任契約」が法律行為を委託するのに対し、「準委任契約」は法律行為以外のあらゆる業務を委託します。

委任契約を結ぶことがある職種としては、弁護士、税理士、司法書士などが挙げられます。準委任契約は医師、受付、事務、美容師、ITエンジニアなど、職種は多岐にわたります。
<フランチャイズ、業務委託の違い>

似ているように感じるフランチャイズと業務委託ですが、さまざまな点から比較してみると、内容は全く異なります。

フランチャイズで働くには、本部とフランチャイズ契約を結んで加盟店となり、本部が提供する商品やサービスを販売します。ロゴや店舗名なども本部と同じものを使い、統一されたマニュアルに沿って店舗運営を行います。フランチャイズは、「本部からネームバリューを借り、自ら経営を担う」というイメージです。

一方、業務委託で働くには「業務委託契約」を締結し、企業が行う業務の一部を請け負います。業務委託は、「企業から依頼を受け、仕事の一部を手助けする」というイメージです。

フランチャイズと業務委託では、報酬の受け取り方にも大きな違いがあります。フランチャイズでは、売上の一部をロイヤリティとして本部に支払いますが、残りは全てフランチャイズオーナーのものとなります。一方、たとえば業務委託で飲食店を請け負った場合は、どれだけ多くの売上が上がったとしても、受け取れるのは業務委託費のみです。

また、フランチャイズと業務委託では、仕事をするうえで発生する費用も異なります。フランチャイズの場合、毎月支払うロイヤリティのほか、開業資金として加盟金や保証金などもかかります。一方、業務委託ではこうした費用は発生しません。

なお、フランチャイズは、飲食店やコンビニ、学習塾、クリーニング店、ハウスクリーニング、スポーツジムなど幅広い業界でそのビジネスモデルが取り入れられています。一方の業務委託は、先ほどもあったように、ライターやプログラマー、デザイナー、警備員、営業、医師、受付、事務など多岐にわたる職種で活用されています。
■フランチャイズ、業務委託のメリットとデメリット

フランチャイズと業務委託の内容を詳しく見てみると、実際には全く異なる形態のビジネスであることがわかります。それでは、フランチャイズと業務委託には、それぞれどのようなメリット、デメリットが存在するのでしょうか。
<フランチャイズ>

・メリット

フランチャイズには、知識や経験がなくても開業できるというメリットがあります。経営のノウハウは本部から提供してもらえるため、早い時期から収益化を図ることも可能です。さらに、開業前だけでなく、開業後も定期的なサポートが受けられ、一人で行き詰まることなくスムーズに経営を行えます。

また、本部の知名度やブランド力を活用できるのも大きな利点でしょう。フランチャイズが大手の場合、すでに顧客からの知名度が高い状態で開業できますので、非常に有利です。本部は日頃から広告宣伝に力を入れてくれるため、加盟店オーナーは店舗運営に専念しやすいというメリットもあります。

そして、フランチャイズで開業すると、自分で一から開業するよりも負担が軽くて済みます。自分で開業する場合、ビジネスモデルの構築や開業準備に多大な時間がかかってしまいます。一方、フランチャイズなら、本部が築き上げた経営ノウハウを活用できますので、時間をかけることなく開業が可能です。

費用の面でも、フランチャイズのほうが開業資金を抑えられる傾向にあります。本部の持つ独自ルートで店舗経営に必要な資材を調達できますし、広告宣伝も本部がやってくれるため、大幅なコストカットが実現できるのです。

・デメリット

一方、フランチャイズのデメリットは、毎月売上の一部から「ロイヤリティ」を支払う点です。通常、売上があまり出ていない月でもロイヤリティは発生しますので、ロイヤリティが重い負担になる場合もあります。ただし、フランチャイズによっては赤字補てん制度を設けているところもありますので、よく確認してみましょう。

また、フランチャイズでは本部の知名度やブランド力を活用できる一方、本部企業や他の加盟店で不祥事などが起きた場合は、自分の店舗でも売上が落ちるなどダメージを被る恐れがあります。

最近では、アルバイト店員が悪ふざけの動画をSNSにアップするなどの事例が挙げられます。それが原因で企業イメージが悪くなり、加盟店全体にも悪影響を及ぼすことがあるのです。

さらに、自由な経営が難しい点もフランチャイズのデメリットです。フランチャイズでは、商品やサービスの質を均一化し、ブランドイメージを保持する必要があります。そのため、加盟店には、本部の用意したマニュアル通りに運営することが求められるのです。業種によって経営の自由度は異なりますが、完全に自分の思い通りの経営はできないことを知っておきましょう。
<業務委託>

・メリット

業務委託のメリットは、自分が得意なことや専門性を生かして仕事ができる点です。特定の分野で高いスキルを持っていれば、好条件で仕事を受注できるでしょう。また、自分が受けたい仕事だけ請け負うといった働き方も可能になります。

自分のライフスタイルに合わせて働けるのも、業務委託の魅力です。勤務時間に縛りのない仕事を選べば、自分の好きな時間に働くことができます。また、仕事や契約内容によっては、全て在宅で完結するものもありますので、自宅で働きたいという人にも向いています。

さらに、業務委託は、フランチャイズと比べると、自由に働くことができます。契約内容にもよりますが、業務委託では、商品の販売方法や仕事の進め方などを自分で決められるケースも多いです。

それに、仕事の委託を受けた企業にロイヤリティなどの費用を支払う必要はありません。初期費用をかけずに仕事を請け負い、報酬を手にできる点は業務委託のメリットの一つです。

・デメリット

一方、業務委託のデメリットは、依頼が来なければ仕事がないという点です。自分で売り込むことも可能ですが、依頼する企業が求めるスキルを持っていなければ、仕事を受注することはできません。高いスキルを持っている人は高収入を狙える反面、収入が安定しづらいというのはデメリットとなります。

また、業務委託は、全て自己責任のもと仕事を行います。そのため、「依頼された業務は必ず遂行する」という強い責任感が必要です。依頼した仕事を遂行できなければ、報酬を得られないどころか、最悪の場合、損害賠償を求められる恐れもあります。

そして、業務委託契約では、依頼した企業との間に雇用関係はありません。そのため、仕事を受ける側は労働者とはならず、労働者を保護する労働基準法などが適用されないのです。万が一の時には自分の身は自分で守らなければなりませんので、安全面には特に注意が必要です。
■フランチャイズと業務委託はどんな人に向いている?

最後に、フランチャイズと業務委託はそれぞれどのような人に向いているのかご紹介します。
<フランチャイズが向いている人>

フランチャイズが向いているのは、本部の持つ経営ノウハウやブランド力を生かして事業に取り組みたいという人です。企業理念や方針に共感できるフランチャイズがある場合は、加盟店として開業すると、自分が求めるような店舗運営を実現できる可能性が高いでしょう。

また、「起業や店舗運営が初めてなので、本部からアドバイスを受けたい」という人にもおすすめです。その場合、サポート体制に定評のあるフランチャイズを選ぶようにしましょう。

なお、フランチャイズに加盟して開業するには、はじめに加盟金などの開業資金がかかります。フランチャイズへの加盟を検討する際は、必要な資金の調達が可能かどうかも必ず確認しましょう。
<業務委託が向いている人>

業務委託が向いているのは、特定の分野で知識やスキルを持っている人です。仕事の内容によっては、ある程度の経験が求められる場合もあります。

また、業務委託の仕事は、フランチャイズのように、細かいマニュアルに沿って行う必要はありませんので、「自分で自由に仕事を進めたい」という人にも向いているでしょう。時間や場所にとらわれずに働ける仕事も多いため、家事や育児などを優先させたい人にもおすすめの働き方です。

フランチャイズと業務委託は、ビジネスの形態が全く異なります。フランチャイズと業務委託のどちらにすべきか迷う場合は、「自分はどちらに向いているのか」をよく見極めて決めることが大切です。
■フランチャイズと業務委託、魅力を感じる働き方を選ぼう

フランチャイズは、本部とフランチャイズ契約を交わしたうえで、本部のマニュアルに従いながら店舗運営を進めるビジネスです。それに対し、業務委託は、企業から業務の一部を委託され、企業の代わりに仕事を行うことです。

両者の違いやメリット、デメリットをよく把握したうえで、自分はどちらに向くのか、どちらに魅力を感じるのかを基準に働き方を決めるといいでしょう。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら