【千葉魂】吉井監督、朗希と久々の対話 千葉ロッテ

ロッカーは静まり返っていた。6月18日、横浜スタジアムでのベイスターズ戦。デーゲームで行われた試合は1対6で敗れた。吉井理人監督は試合後、コーチミーティングに参加をし、その後、監督室でタブレットに試合を振り返り、レポートにして打ち込んだ。勝っても負けても行う作業だ。気づけば、周りには誰もいない。浴室で湯船に浸かり、敗戦の気持ちを切り替え、もう誰もいないと思いながらも選手ロッカーを覗くと一人だけ選手の姿があった。この日、先発をして6回を投げて被安打6(1本塁打)、4失点で敗戦投手となった佐々木朗希投手だった。うなだれるように座っていた。
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「落ち込んでいるように見えた。少し話をした」と吉井監督。
投手コーチ時代はよく2人で話をしたが、監督になってから、このように2人きりで話をする機会はあまりなかった。試合前練習で練習を見ながら、ちょっと声をかけたりする程度。久しぶりに2人だけで話をした。
「責任感の強い子だから。ただ、ピッチャーは打たれることはある。ホームランもある。特に横浜スタジアムは狭い球場。その中でギリギリのホームランだった。色々と反省点はあるとは思うけど、あまり思い込まずにやってほしい」と吉井監督は振り返る。
吉井監督はコーチ時代から選手たちにいつもパーフェクトを求めないでいいと伝えてきた。「グレートでなくていい。グッドでいい」。ピッチャーはどうしても完璧な投球を追い求め、結果、苦しくなる。実際、一年間で完璧な投球ができるのは、数えても数回あるかないかだ。だからこそ、いつも多少、ゆとりを持った結果を選手たちに目指してほしいと考えている。
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ファイターズの投手コーチ時代には完璧を求めるあまりに苦しい投球が続く投手に「バカボンのパパのようになれ」と珍しいアドバイスをしたことがあった。唐突なアドバイスにキョトンとする投手に「いつも、バカボンのパパのように『これでいいのだ!』と言いながら投げて見なさい」と付け加え、ニヤリと笑った。それ以降、その投手のピッチングに余裕が生まれ、結果が出るようになったという。
佐々木朗希は21歳の若さで日本中の注目を一身に浴びている。マリーンズのエース投手として背負っているものはあまりにも大きい。おのずと、どうしても完璧な投球、理想のボールを追いかけてしまいがちになるが、指揮官は「これでいいのだ!」といつも優しい目で見つめている。悔しさと反省が残った交流戦最後の先発登板。そこから若者が指揮官とロッカーで2人だけで話をした言葉を胸に、さらにどのような成長を遂げていくのだろうか。(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)