久しぶりの明るいニュースでした。先月の天皇皇后両陛下のインドネシア訪問です。なんといっても、皇后雅子さまの生き生きとされた振る舞い、はじけるような笑顔、そしてその様子を包み込むような温かなまなざしでご覧になる天皇陛下。時折お互いに目線を交わされ、またそれぞれがとびきりの笑顔で出迎えた方々に接する。そこには終始、形ばかりではない本物のご交流と会話が生まれ、笑い声があふれていました。月並みな言い方で僭越(せんえつ)ですが、本当に仲むつまじいご夫妻だと感じ入りました。即位後としては初めて、実に21年ぶりの海外親善訪問でした。
とりわけ印象的だったのは、両陛下の自然で飾らないお人柄そのものが伝わってきた場面でした。インドネシアの学生が日本のアニメの「ナルト」が好きだと伝えると、天皇陛下がすかさず「私は徳仁(なるひと)です」とダジャレを交えてお答えになり、雅子さまをはじめ周囲が大きな笑いに包まれたこと。
インドネシア伝統のバティックを視察された雅子さまが、勧められるままにバティックを全身にまとわれた時に見せたキラキラと輝くような笑顔。そして、ボロブドゥール遺跡をバティックのシャツとサンダルで訪れた天皇陛下。サンダルは遺跡を保護するためといいます。それにしても陛下の素足とサンダル姿は新鮮でした。令和の新しい皇室親善の在り方が凝縮されていたような場面の数々でした。
両陛下は、間違いなくインドネシアの人々を魅了されたと思います。これまでの決して平たんではなかった道のりを踏みしめ、乗り越えられてきたご夫妻にとって、大輪の花がぱあっと開いたそんな6日間のご訪問だったのではないでしょうか。幸せを勝手におすそ分けいただいた気分です。(キャスター・安藤優子)