強盗容疑で逮捕された特殊詐欺グループの「かけ子」のリーダー、今村磨人容疑者(39)らは、時には「ルフィ」や「キム」、また別の事件では「ミツハシ」「刃牙」など、指示役と特定されるのを避けるため、複数の名前を使い分け、犯行を重ねていた。
昨年5月に京都市の貴金属店で高級時計が奪われた強盗事件で「ルフィ」「刃牙」を名乗って指示を送っていたSNSアカウントと、今年1月に千葉県大網白里市のリサイクルショップで「ミツハシ」の名前を使って強盗致傷事件を指示していたアカウントが、どちらも今村容疑者の電話番号にひも付いていたことが分かった。
今村容疑者は事件当時、フィリピンのビクタン収容所で拘束されていた。
「京都の強盗事件では実行役が移動中、高速道路のサービスエリアのトイレで何者かに襲われ、強奪したロレックス41本のうち、40本が横取りされています。強奪した腕時計を実行役が運んでいるのは、グループ内でも今村容疑者しか知らず、横取りしたロレックスを岐阜県内のコインロッカーから取り出し、換金するよう運搬役に指示していたのも今村だった。横取りの目的は“失敗”を口実にして強盗の実行役に報酬を払わず、自分の取り分を増やすためだった」(捜査事情通)
「ミツハシ」を名乗る人物は、さらに2つの事件を指示していた。
今村容疑者は昨年10月、東京都稲城市の住宅から現金3500万円と金塊が奪われた強盗致傷事件と、今年1月に東京都狛江市の住宅で90歳の住人女性が殺害された強盗致死事件にも関与。今村容疑者と同時期にフィリピンの入管施設に収容されていた男が、「今村が施設でルフィを名乗り、『3分以内に終わらせろ。店の真ん中のショーケースを狙え』と指示を出していた」と証言している。
稲城の事件の実行役のスマホを解析したところ、「ルフィ」を名乗る人物が「自分はミツハシだ」と伝えていたことが判明。大網白里の事件で逮捕された人物が京都と稲城の事件後、実行役から回収した金を今村容疑者の口座に送金し、ロレックスを換金した運搬役も、今村容疑者の銀行口座に約100万円を振り込んでいた。
ルフィグループを知る元「かけ子」がこう言う。
「今村は特殊詐欺事件でも抜け駆けというか、グループとは別に、個人でかけ子を使って詐欺事件を指示することが結構あった。グループ内でも立場が弱く、分け前が少なかったことから単独行動に出ていたようです。とにかく自分より立場の弱い者に対しては、むちゃくちゃな扱いをする。こすいヤツでした」
逮捕前、スマホのデータが消去されるなど、証拠隠滅が図られたことから、指示役の特定は困難を極めたが、特殊詐欺事件同様、カネの流れからアシがついた。