自動車会社からの変革? トヨタが新施策「アルムナイ採用」を導入した理由

トヨタ自動車は2023年7月26日、採用全般に関するメディア向け説明会を開催しました。新施策として退職者を再雇用する「アルムナイ採用」を導入し、専用のHPもオープンしたそうです。採用に力を入れているトヨタですが、今後の目指す姿とは? 説明会を取材しました。

○採用で大事にしていることは?

世界的な自動車会社のトヨタは今、「モビリティカンパニーへの変革」を目指してさまざまな取り組みを進めています。その実現にむけ、「最大の財産は人」というのが同社の考え。「仲間作りにつながる採用に本気で取り組んでいる」とトヨタは発表しています。「一人ではできないことでも仲間と一緒に行えばできることを信じており、仲間の個性も大事にしたい。余力作り、風土作り、やりがいを持てる職場作りを進めたい。その土台として、採用への取り組みを強化している」とのことです。

トヨタが採用のキーワードに挙げるのが「多様性」と「共感」です。求める人物像は「一緒に頑張りたいと思ってもらえる人間力」「トヨタで夢を実現したいと思う情熱」「未来に向かって他の仲間と共に手をつないで社会をよくしたいと考える人々」だそうです。

「多様性」のある職場づくりを進めるため、トヨタは総合職・事務技術職の新卒採用で数年前から変革を進めています。大学別だったOB・OGのコミュニケーション範囲を地域別に変え、幅広い大学を対象にしました。技術系で行っていた学校推薦も廃止し、学生の選択肢も広げて自身の意思で応募できるように変更。高校生採用を再開し、高専生の採用にも力を入れ始めました。

結果として、出身校採用実績は技術系が2020年入社の68校から2023年入社は87校に、事務職は2020年入社の19校から2023年入社は25校に増加。毎年10~20校は新規あるいは入れ替わりとなっています。

2018年以前は限定的だったキャリア採用も、多様な人材確保のため2019年から本格的にスタートさせました。HPをリニューアルし、リファラル採用・ダイレクトリクルーティングも始めた結果、2022年度のキャリア採用比率は47%まで伸びました。

ハードのイメージが強いトヨタですが職種の多様化も進んでいて、今や社員の半分がソフトウェア関係になっているとか。また、約7割が他業界からの転職となっており、幅広いバックグラウンドを持つ社員が集まっています。

社員の働き方も多様化し、リモートワーク導入やキャリア形成後押しのための施策も進めています。リモートワーク率は2022年9月の実績で約50%でした。
○新施策「アルムナイ採用」とは?

さらに新施策として、自己都合による退職者と現役社員をつなげる交流の場を立ち上げました。このコミュニティは口コミをベースに拡大しており、今では200人以上のネットワークになっているのだとか。これは退職者の再雇用を意味する「アルムナイ採用」の強化にもつながる施策です。

アルムナイとはOB・OGを意味するラテン語です。アルムナイ同士で気軽に情報交換したり、退職後も仲間として価値観を共有したりできる場を用意するすることで、さまざまな企業とのつながりが生まれますし、トヨタとしては退職者の再雇用につなげることもできます。7月26日には専用HPをオープンし、一般公開を開始しました。

モビリティカンパニーへの変革を掲げるトヨタでは、新領域への挑戦に向けたパートナーシップ構築や仲間づくりが加速しています。それに伴い、自己実現や成長に向け社員が社外で学ぶ機会も増えています。トヨタとしては自動車業界以外からの採用も増やしながら、社員の多様なキャリアに寄り添っていく必要があると考えているそうです。