ススキノ首なし事件で父娘がダンマリ続ける理由…若狭勝弁護士も「想像絶する事件」と困惑

入念な計画と父娘の異様な行動が、徐々に明らかになってきた。
札幌市の繁華街ススキノのラブホテルで今年7月、頭部のない男性(62)の遺体が見つかった事件。北海道警中央捜査本部は14日、無職の田村瑠奈(29)と父親で精神科医の修(59)、母親の浩子(60)ら3容疑者を殺人の疑いで再逮捕した。
7月1日午後10時50分、男性と一緒にラブホに入室した瑠奈容疑者は、男性を後ろ手に拘束し、抵抗できない状態にして背後から首付近を刃物で複数回刺したという。男性を殺害後、瑠奈容疑者は自宅から持ち込んだ工具を使い、その場で男性のスマホを破壊していた。
「スマホには、瑠奈容疑者が男性から性的暴行を受けた時の動画が保存されていたようです。瑠奈容疑者が男性を誘い出した目的のひとつが自分の動画を消去することだった。瑠奈容疑者は男性を殺害後、ノコギリで首を切り、返り血を浴室で洗い流し、服を着替え、遺留品をカバンに詰め込み、リュックサックを背負い、スーツケースを引いて部屋を後にした。瑠奈容疑者は男性を殺害しながら、同時にその模様を動画撮影していた。入室から退室まで、約3時間の早業でした」(捜査事情通)
ホテルから出た瑠奈容疑者は待機していた修容疑者の車に乗り込み、いったん帰宅。男性の生首を自宅に置くと、数時間後、再び父親が運転する車でススキノに戻り、朝までクラブで踊っていたというから、普通の神経の持ち主ができることではない。
瑠奈容疑者は5月下旬、この男性とススキノのクラブで会っていた。当日、同じフロアには愛娘の姿をじっと見守る修容疑者の姿があった。瑠奈容疑者は修容疑者の目の前で父親より3歳年上の女装姿の中年男の首に手を回し、何度も抱擁を交わしていた。その時、修容疑者は何を思っていたのか。その夜、2人の間にトラブルが発生し、1カ月半後の首狩り事件へとつながった。
一般常識とはかけ離れた父娘の計画的かつ奇怪な行動は、今後の公判にどんな影響を与えるのか。元東京地検特捜部副部長の若狭勝弁護士は「裁判に備え、念のために精神鑑定する場合と、明らかに必要なケースがありますが、今回はどちらかよく分かりません」とこう続ける。
■精神科医が鑑定にかけられれば前代未聞
「想像を絶する事件です。正常ではない状態なのに計画的に犯行に及んでいます。どういうところに原因があるのか。精神的に解明しないと、刑事裁判を適正に進めることができません。問題は父親です。精神科医を鑑定するとなれば前代未聞です。父親の鑑定の必要性をどう判断するのかが、事件のポイントになる。娘が精神的に問題があるとしても、なぜ父親まで事件に加担したのか。父親も精神的に問題があったのか。それによって父親の役割分担が大きく変わります」
先月24日の逮捕から22日が経過したが、事件について家族3人はいずれも黙秘または否認しているという。
「当初の私の見立てでは情状を良くするために、こういう状況だったので殺さざるを得なかったと、父親がすべて話すのかなと思っていました。何も話さないということは、彼らの中に我々の想像を超えるものがあり、それを話すと不利になるから黙秘や否認しているのではないか。いずれにせよ、鑑定が必要です」(若狭氏)
損傷した遺体に危害を加えたという情報もある。親は娘をかばっているのか。