3年ぶりのノーマスク生活へ、政府が踏み切った。基本の感染対策の緩和は、新型コロナウイルスへの向き合い方の大きな転換点になる。
新たな指針の基本は、マスクを着用するかどうかについて、3月13日からは屋内外を問わず「個人の判断に委ねる」というものだ。
全員の着席が可能な高速バスや貸し切りバスなどでも外すことを容認する。
ただし周囲に感染を広げないよう、通勤ラッシュ時の混雑したバスや電車などでは引き続き着用を推奨。医療機関や高齢者施設を訪問する際も着けた方がよいとする。
新型コロナの感染症法上の位置付けが、5月8日から季節性インフルエンザ並みの「5類」に引き下げられるのに伴う対応という。
昨年、カタールであったサッカーワールドカップでは、ノーマスクで盛り上がる観客に、日本との違いが話題になった。「脱マスク」が進む欧米に合わせ、5月のG7広島サミットまでにはとの、政治的スケジュールも見え隠れする。
それとは別に、今春卒業を控える中高生からは「同級生の素顔を見たことがない」との声があり、「せめて卒業式だけでもマスクなしで」と緩和を求める意見が出ていた。
コロナ禍で窮屈な3年間を過ごしてきた子どもたちへの配慮との考えにはうなずく。
だがしかし、5類にしたからといって感染力が弱くなるわけではない。
混乱が起きないよう着用が必要なケースと、そうでないケースの丁寧な説明と周知が必要だ。
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卒業式について、政府にコロナ対策を助言する専門家有志らは、マスク未着用での式典参加を容認する見解を示した。
ただ言い回しは極めて慎重だ。
マスクを着けた人のリスクが未着用の場合と比べて0・84倍低下するとの解析結果など、有効性に関する資料を公表。米国では着用義務が解除された学校で、感染者数が増加したといった研究報告もあるとした。
巣立ちを祝う大切な日の脱マスクに同意すると同時に有志らは、体調に不安がある人は参加を控えることや十分な換気といった対応を要請している。
マスクを外す場面では、それ以外の対策がより重要となるということだ。
コロナ前に戻すのではなく、この3年間で積み上げてきた経験と知見を対応に生かさなければならない。
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マスクを巡っては、一時、着用を強要する「マスク警察」が問題となった。着用への同調圧力が、今度は脱マスクへの圧力として働かないか心配だ。
共同通信社が先月実施した全国電話世論調査では、高年層ほどルール緩和へ不安を抱いていた。
感染への不安のほか、顔を見られたくないとの気持ちから、マスクを外せない子どもたちもいる。
マスクを必要とする人からマスクを奪うことがないよう、個人の判断の尊重と柔軟な対応が求められる。