母の自宅介護を決意した父と娘、その現実と葛藤とは – コミックエッセイ『20代、親を看取る。』

ある日突然、母親の余命がわずかと知り、最期の時間を家族で過ごすために自宅介護という選択をした、20代のキクチさん。そんな彼女が初めて体験した自宅介護の現実や、“親との死別”と向き合う中で複雑に揺れ動く感情を描いた、若年層の介護体験コミックエッセイ『20代、親を看取る。』(KADOKAWA)が発売された。介護経験者が思わず共感してしまうのはもちろん、まだ自分には関係ないと思っていた人にとっても新たな気付きがある作品となっている。

Instagramで自らの体験を漫画にして投稿しているキクチさん。Instagramでは全46回にわたって描かれている本作品だが、書籍『20代、親を看取る。』では、全19話のエピソードに、新規エピソードやテキストエッセイなどが追加されるなど、漫画では描ききれなかった部分も語られている。

同書の中から第9話「深夜の氷事件で大号泣」を紹介する。

○第9話「深夜の氷事件で大号泣」

深夜に、コンビニで売られている“クラッシュされた氷が食べたい”と言い出した母親。製氷機から砕けた小さな氷を集めて食べさせようとしたキクチさんでしたが……

眠いのを我慢して母のためにと用意した氷でしたが、“コップが違う”と納得してくれない母親。そんな母親の態度にイライラし始めたキクチさん、「もういい、あなたじゃ話にならない。お父さん呼んできて」そう言われると、ついに……

「いいよもう」感情が爆発してしまい、涙が止まらないキクチさん。駆け付けた父親もまた、珍しく妻に対してキツい口調に。感情を露わにする二人だったが、当の本人は悪びれもしない。しかし、それも全て病気のせいだったのです。

自宅介護を続ける中で、さまざまな感情が入り乱れ葛藤する家族。

母親の入院を知ってから、自宅介護を決意するに至るまでの過程、自宅介護の現実と葛藤、看取り、そして葬儀を終えるまでのエピソードが丁寧に描かれており、介護する側・される側のリアルな日常と複雑な感情が詰まった一冊となっている。

CHAPTER1「入院」、CHAPTER2「自宅介護」、CHAPTER3「看取り後」で構成されており、A5版、全174ページ。価格は1,430円。