100年飛ぶつもり!?「漆黒の偵察機」U-2アップデート型が初飛行 ロッキードマーチン

原型の初飛行は1955年8月のことです。
アメリカの大手航空機メーカー、ロッキード・マーチンは2023年9月26日、戦略偵察機U-2ATR型の初飛行に成功したと発表しました。
ATRとは「アビオニクス テック リフレッシュ」の略で、それが表すように航空機搭載用の電子機器を更新し、現代でも通用するレベルにまで性能を向上させたものになります。
具体的には、通信装置やナビゲーションシステムなどを最新のものへ換装。また陸海空、さらには宇宙やサイバー空間とも連接・統合できるよう新たなミッションコンピューターを搭載したとのこと。なお、このミッション・コンピューターは、空軍が指定したオープン・ミッション・システムに準拠して設計・開発されているそうです。
加えてコックピット・ディスプレイも新式のものへ換装していますが、これもパイロットの作業量を減らすとともに、収集した各種データを見やすく表示できるようにして、パイロットがより迅速に意思決定できるようにしているといいます。
100年飛ぶつもり!?「漆黒の偵察機」U-2アップデート型が…の画像はこちら >>U-2ATRプログラムの初飛行の様子(画像:ロッキード・マーチン)。
アメリカ空軍は2023年現在、戦略偵察機として有人のU2以外に、大型の無人航空機(UAV)であるRQ-4「グローバルホーク」やRQ-170「センチネル」などを運用しています。しかし、U-2はこれらUAVと比べて積載力に優れているため、多数のセンサー類を搭載することが可能で、情報収集能力の観点から勝っています。また将来的により優れた偵察機材が登場した場合も、UAVより柔軟に搭載・対応することが可能です。
加えて運用コストについてもRQ-4「グローバルホーク」やRQ-170「センチネル」よりも安いというメリットもあります。1飛行時間あたりのコストはU-2とRQ-4を比べた場合、後者の方が3倍近くかかるともいわれています。そのため、高性能かつ安価なU-2を手放す理由などなく、撃墜の危険性が低い任務ではU-2の方が重用されます。
U-2は1955年8月1日に初飛行した飛行機ですが、アメリカ空軍ではU-2の退役を無期限延期の状態としており、メーカーのロッキード・マーチンでは運用寿命を2050年まで延長するプログラムを立てています。そのため、U-2は状況次第では100年近く飛び続ける航空機になりそうです。