練炭中毒で住職殺害 霊園トラブルの中身と社長&女役員「30分で犯行準備」に透ける計画性

たとえ練炭殺害が失敗に終わったとしても、ガソリンを使って焼死させる計画だったのだろう。
東京都足立区の「源証寺」住職の大谷忍昌さん(当時70)が今年7月、一酸化炭素中毒で殺害された事件。殺人容疑などで逮捕された石材会社「鵠祥堂」社長の斎藤竜太(50)と同役員の青木淳子(63)両容疑者は、2020年に開園した寺の樹木葬霊園「足立セメタリーパーク」の運営方針を巡り、1年以上前から大谷さんと対立。
13宗派の「在来仏教徒」のみを受け入れる方針だった大谷さんに対し2人は霊園の対象を「宗派不問」と主張していた。2人は事件当日朝、大谷さんが樹木葬のために納骨堂に入ることを事前に把握しており周到に殺害計画を立てていた。
「2人は犯行前夜、暗がりの中、はしごを使って高さ3メートルの納骨堂に侵入し、練炭28個を2本の卒塔婆の上に丁寧に並べていた。練炭の下に2本の卒塔婆が平行に置かれていたのは、空気の通り道をつくり、長時間燃焼させるためです。さらに重さ20キロ以上もあるガソリン20リットルを十数本のペットボトルに小分けにし、焼却炉内に仕掛けていました。焼却炉は大谷さんが普段、廃材や骨壺の箱を燃やすために使っていたもので、気づかずに使えば、大爆発していた。2つの殺害準備にかかった時間はわずか約30分間という早業だった」(捜査関係者)
そこまでして2人が住職を殺害しようとした「恨み」とは、一体何だったのか。
「鵠祥堂は境内の事務所に社員を常駐させるなど、霊園の営業や管理を請け負っていた。最初は誰でも墓地を購入できたのですが、途中から大谷さんが鵠祥堂に対し購入の条件として檀家になることを求めたそうです。他にもいくつも条件を突き付けられたため、徐々に売れなくなった。役員の青木は寺に常駐していませんでしたが、寺側は青木を出入り禁止にした。次第に両者の関係は修復できなくなったようです」(捜査事情通)
社長の斎藤容疑者は千葉県鎌ケ谷市の一軒家で、妻と2人暮らしだった。今年に入ってから、それまで手入れが行き届いていた庭の雑草が伸び放題になるなど、生活環境が変わったようだった。
一方、東京都練馬区の住宅で1人暮らしをしていた青木容疑者のもとを13歳年下の斎藤容疑者が会社の車で訪れ、朝まで一緒にいるのを近隣住民に何度も目撃されている。
「練炭とガソリンを購入するなど、すぐに足がつく手口は確かに稚拙ですが、50歳と63歳の男女が入念な準備を行い、慣れた手つきで犯行に及んでいる。本人たちは否認を続けていますが、よほどの恨みがなければそこまでしない。亡くなった大谷さんはお金にシビアだったようですが、もとはといえばお互い利益を上げようとして霊園の運営を始めたわけですから、お金で揉めることは十分考えられます」(前出の捜査事情通)
年の離れた男女2人が共謀の上、練炭とガソリンを用意し、1532年創建の古刹の41代目住職を殺害とは、サスペンスドラマのようだ。