誰もが「いきなり本番かよ!」 旅客機の脱出用すべり台、うまく滑れますか? 知っておきたい“コツ”

旅客機の非常用の脱出スライド(滑り台)は、いきなり「本番」で使うことになる“設備のひとつです。うまく滑り降りるコツなどはあるのでしょうか。
旅客機が離陸へ向けて地上滑走を始めると流れる「安全ビデオ」は、乗客が注意したり守ったりするべきことを示しています。その中の1つ、非常用の脱出スライド(滑り台)は、いきなり「本番」で使うことになる設備のひとつです。うまく滑り降りるコツはあるのでしょうか。
誰もが「いきなり本番かよ!」 旅客機の脱出用すべり台、うまく…の画像はこちら >>離陸する旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。
非常脱出用のスライドは、乗客と乗務員全員が半数の脱出ドアから夜間でも90秒以内で逃れることができるように作られています。現在の膨張式は1950年代中頃から広まり、1960年代中頃からドアを開けると自動で膨らむことが求められ、今につながっています。
非常脱出はいつ起きるかわからず、乗客も“練習”などできません。そのうえ、安全ビデオはわずか3~4分間の間に、酸素マスクの使用法や乱気流時の対応など、盛り込まねばならないことが多くあります。非常脱出は一般にビデオの終盤に流れますが、多くを割けません。そこで、「本番」に備えて、「両腕を前に突き出して滑る」姿勢を頭に入れておく必要があるでしょう。
両腕を前に突き出して滑ることから、航空会社のよっては、「コ」の字型と表現しているこの姿勢は、座席前のポケットにある「安全のしおり」にも記されています。
客室乗務員は非常脱出の心得を持つために、実際に訓練で滑り降りた経験を持っています。このため客室乗務員たちに聞くと、コの字型の体制は、「体のバランスを取って滑ることができる」「降りきった際に尻もちをつかず、そのまま走って遠くへ逃げやすい」効果があるといいます。地上で脱出を助けるアシスト役のほかの乗客が、滑り降りてくる乗客の腕や胴体をつかみやすくして、逃げるのを助ける効果もあるでしょう。
両手を前に突き出す姿勢になりやすいように、安全ビデオやしおりでは、着地点となる滑り台の少し先を見る、横から見て「コ」の字型の姿勢を取るなどと表現したり、滑り台の少し先に赤色の照準マークを付けて着地点を示したりする航空会社もあります。
ちなみに、客室乗務員によると、スライドを滑るのは「けっこう速い」とのことです。筆者も以前に、とある航空会社の非常脱出の訓練を見学したことがありますが、付き添いの広報が「飛び込みで体験してもらおうと思ったのですが、『ズボンがすれてしまうかもしれない』とのことで」と、その日の体験は無しになりました。訓練を受けていた客室乗務員の候補生も皆つなぎ姿でした。
服がすれるほど速い“滑り台”を、もし、「いきなり」使わなければならなくなったら……。訓練を受けた客室乗務員の指示に従うことが第一に必要です。そして、何よりも、まず、搭乗の度に座席前のポケットに入っている安全のしおりを読み、安全ビデオをしっかり見て、心に留めておくことも大切でしょう。