【千葉魂】大一番前、小島「夢見た」 心の余裕が生んだ快投劇 千葉ロッテ

「夢を見ました」。小島和哉投手が食堂でおもむろに、話しかけてきた。10月16日。本拠地ZOZOマリンスタジアムでのクライマックスシリーズファーストステージを1勝1敗で迎えた第3戦。勝てばファイナルステージ進出。負ければ今シーズン終了という緊迫した状況の中、この日、先発の大役を任された左腕エースはおいしそうに昼食を食べながら、不思議そうな顔をしていた。
「ライオンズの高橋光成と練習をしている夢です。仲はいいんですけど、唐突な不思議な夢でしたね」と笑った。
ライオンズの高橋光成とは同じ年で高校日本代表のチームメート。高橋の群馬の実家に遊びにいったこともあるぐらいの仲だ。だから夢に出てきてもおかしくはない。ただ、誰もが緊張をして口数が少なくなる中で、小島はいつも通りのひょうひょうとした表情で試合開始5時間前に夢について語っていた。思えばあの日もそうだった。勝てば2位、負ければ4位が決まるという10月10日のイーグルス戦(楽天モバイルパーク)に先発した時の試合前日。「この前、試合後に行列のできるラーメン店に食べにいったんです。そしたら列の真後ろの人がマリーンズのユニホームを着て、フラッグも持っていました。すごい応援してくださっているファンの方だなあと思いました。でも、ボクは気づかれることはなかったですね」とラーメンを食べにいった際の出来事をうれしそうに話をしてくれた。
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先発登板日が近づくと選手は寡黙になり、誰も近寄れないような緊迫した雰囲気が漂うことが多い。小島もこれまではそうだった。ただ、今年、シーズン終盤の小島はやることはやったという自信の表れなのだろうか、どこか卓越した様子に映る。
シーズン最終戦前にこんな話もしていた。10月8日の朝のこと。メジャーリーグの地区シリーズでドジャースのクレイトン・カーショー投手が先発をしたものの、1回持たず6失点でまさかのノックアウトとなるシーンをテレビで目撃した。メジャーリーグ通算210勝、サイ・ヤング賞を3度獲得しているスタープレーヤーの姿に「あの選手でもこんなことがあるのか」と驚いた。自身もチームの命運を握る先発を間近に控えていた。勝つと負けるでは天国と地獄の差があるほどの大舞台。重圧がのしかかる。それだけに自身の姿になぞらえて「どんなスーパーピッチャーでも結果が伴わないこともある。そう思うと少し気が楽になった」と言った。この日はラグビーワールドカップもテレビ観戦。登板直前でも心に余裕を持ち色々な事象から学び、何かを感じようとする姿があった。
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今年、開幕戦こそ負け投手になったが、チームの命運を握るシーズン最終戦とクライマックスシリーズファーストステージ最終戦での先発登板では、いずれも無失点に抑え、チームを勝利に導いた。そういえば、夢には続きがあった。「マウンドで高橋光成と投球練習をしていたんです。そしたら、なぜか打席に安田が立っていました。あれが、本当に意味が分からなかった」と試合前、クスクスと笑って食事を終えるとロッカーに消えていった。この日、延長十回、安田尚憲内野手がサヨナラヒットを打って、試合は劇的に幕を閉じ、マリーンズはファイナルステージに進んだ。日本一への階段をまた一つ登った。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)