【調査】男女の「賃金格差」は仕方ないと思う? 全国のビジネスパーソンに聞いた

総合転職エージェントのワークポートはこのほど、全国のビジネスパーソンを対象に「男女の賃金格差」についてアンケート調査を実施した。

同調査は2023年10月24日~10月31日、同社を利用している20代~40代・男女367人を対象に、インターネット調査にて行ったもの。

今年のノーベル経済学賞は、男女の賃金格差是正などを研究したアメリカのクラウディア・ゴールディン教授が受賞した。

また、昨年7月から女性活躍推進法の改正に基づき、常用労働者301人以上の大企業に対して男女間賃金格差の情報開示が義務付けられるなど、日本でも賃金格差が問題視されている。

そんな中、今回は実際に現代のビジネスパーソンは賃金格差についてどのように捉えているのか調査した。

はじめに、対象者全員に身近なところで男女の賃金格差を感じることはあるかについて聞いた。その結果、「男性のほうが高い」(49.6%)、「女性のほうが高い」(0.8%)が合わせて50.4%と、約半数の人が男女の賃金格差を実感していることが明らかになった。

また、「男性のほうが高い」と回答した人がその大半を占めたことから、賃金に関しては男性が優位だと感じている人が圧倒的に多いこともわかった。

男性のほうが賃金が高いと回答した人に理由を聞いたところ、「結婚、出産、育児、介護などを女性が負担するケースが多く、女性は管理職への登用も少ないため」(40代・女性・事務)、「子育てや家事の配分が、まだまだ女性が多いから」(40代・男性・営業)など、ライフイベントによる女性のキャリアへの影響や管理職登用の少なさを理由とする意見が多く挙がった。

また、「男性は仕事、女性は家事育児というような昔ながらの風潮が残っているため」(30代・男性・システムエンジニア)、「日本企業特有の男性優位の人事考課であるため」(40代・女性・クリエイター)など、男性中心の社会風潮や企業体質がいまだ根強く残っているとする意見も多数寄せられた。
○▼男性のほうが賃金が高いと感じる理由(一部抜粋)

・「女性は出産などで仕事ができない期間があり、結果的に成果が少なくなることもあるため」(20代・女性・クリエイター)
・「性別によって仕事内容に差があるため。また、女性の管理職登用が極めて少ないため」(30代・男性・製造)
・「重要ポストに女性をあてる気が会社にまったくないから」(30代・女性・企画マーケティング)
・「将来への期待値。女性はいつか辞めてしまうだろうという固定観念があるから」(40代・男性・企画マーケティング)
・「男性決裁者が中心であり、男性優位のバイアスがかかった配属や評価になっているため」(40代・女性・管理)
・「根強い男尊女卑の風潮が残っているため」(20代・男性・管理) …など

続いて、男女の賃金格差を感じることがあると回答した人に、男女の賃金格差は仕方ないと思うか聞いたところ、「まったくそう思わない」(33.0%)、「あまりそう思わない」(30.3%)が合わせて63.3%となった。

男女の賃金格差が仕方ないとは思わないと回答した人に理由を聞いた。「男女平等にするべきだと思うから」(20代・女性・営業)、「性別と能力は関係ないから」(30代・男性・クリエイター)、「同じ仕事をしているにも関わらず性別によって賃金が異なるのは不自然だと感じるから」(40代・女性・管理)など、性別を理由に区別されるべきではないとする意見が中心となった。

反対に「身体的特徴からくる差がある」(30代・男性・営業)、「性別が違えば求められる役割も違ってくる」(30代・男性・機械系エンジニア)などの意見から男女の賃金格差は仕方ないとする声も3割半ほどはあったものの、過半数が性別によって賃金に差が出ることを不満に思っていることがわかった。
○▼男女の賃金格差に不満を感じる理由(一部抜粋)

・「同じ仕事量、能力であれば同じ賃金が支払われるべきだと思うから」(40代・男性・企画マーケティング)
・「憲法で男女平等と言いつつ、給与は不平等なのは納得できないから」(40代・女性・事務)
・「女性にも有能な方がいる。その方々がもっと社会に出て、貢献できるチャンスを与えるべきだと思うから」(30代・男性・製造)
・「職種にもよるが、女性より男性の方が必ずしも仕事ができるとは限らないから」(40代・女性・事務)
・「過去には、女性は家にいるものなどの考えがあったかもしれないが、現代では働いている女性が多いため。また、育休などを男性が取得して家事育児を性別関係なく行うべきだと考えているため」(20代・男性・その他)
・「働く時間帯やテレワークを駆使することで生産性を評価の軸にすれば差は生まれないと思うから」(40代・男性・営業) …など

さらに、前出の回答者に男女の賃金格差の解消のために、職場に改善を希望するか聞いたところ、58.9%の人が「希望する」と回答した。

職場に改善を希望すると回答した人に、具体的にどのような対策を求めるか聞くと、「女性の管理職登用、昇給を男性並みにする」(40代・男性・システムエンジニア)、「性別ではなく能力で査定する」(40代・女性・その他)、「女性も同等の仕事をこなせる職場環境づくり」(30代・男性・製造)、「男性にも育休を取らせる。雇用面での性差別をなくす」(30代・女性・公務員)など、男女が平等に活躍できる職場の環境や仕組みづくりを求める意見が多く挙がった。

また、「女性に補佐を要求する風潮をなくす」(40代・女性・管理)、「男性社員へ積極的に主要業務を回す上司や、男女の社員が同じことを発言しても男性の意見のみを擁護するような環境の是正」(30代・女性・管理)など、ジェンダーハラスメントの解決を望む声も寄せられた。
○▼男女の賃金格差解消のために職場に求める対策(一部抜粋)

・「クオータ制の導入。会議や重要な意志決定の場に半数は女性を入れ、幹部役員にも女性を引き上げる」(30代・女性・企画マーケティング)
・「管理職の男女割合をしっかり把握し、男女ともにどんな人生ステージにおいても働きやすい環境を目指す」(20代・女性・接客販売)
・「性別の違いによる作業の振り分けをなくす」(40代・男性・製造)
・「身体能力の差を軽減するための物理的な投資と改善」(40代・男性・機械系エンジニア)
・「性別に関わらず公正で明確な評価・昇給システムの確立」(40代・女性・接客販売)
・「男性の育児休業制度の活性化」(30代・男性・営業) …など

最後に、対象者全員に賃金格差が生じたとしても納得がいく理由はどれか尋ねたところ(複数回答可)、「仕事の責任の重さ」が82.3%で最多となった。

次いで「成果の大きさ・生産性の高さ」(69.8%)、「スキル・資格の有無」(60.2%)と続いており、多くのビジネスパーソンが実績や能力による賃金の決定を望んでいる傾向が読み取れた。

今回の調査では、男女の賃金格差問題について、実際に身近なところで男女不平等を実感し、その現状に不満を持っている人が少なくないという実情が明らかになった。

日本の社会や企業には男性中心の風潮が根強く残っているとする意見や、女性への評価・待遇の改善を求める声が多いことからも、男女の賃金格差をなくしていくためには女性の活躍推進が要といえるだろう。

さらに特筆すべき点は、そういった不満や是正を求める意見が女性からだけでなく男性からも多く寄せられたこと。男性から見ても仕事の場においてはまだまだ女性が不利な状況にあるケースが多く、その改善を求めている男性も多いことがわかった。

男女の賃金格差解消に向け、社会全体で女性の管理職登用の活発化やジェンダーハラスメントの解決などに一層注力する必要があるのではないだろうか。