銚子漁港サンマ水揚げなし 地元に漂う諦めムード 店では「看板商品」出せず

銚子漁港(銚子市)で昨年のサンマ水揚げが1950年以降初めて「ゼロ」となり、今年も13日まで水揚げはなく深刻な状況が続いている。一昨年の初水揚げは11月下旬で、サンマ漁は12月中まで続くため「2年ぶり秋の便り」の可能性は残っているが、海水温の上昇や潮流の変化などによる漁場の沖合化が進んでおり、漁場から遠い銚子漁港では諦めムードすら漂っている。
2000年以降の銚子漁港のサンマ水揚げは、09年に6万1333トンあったが全国の傾向と同様に減少。深刻な不漁となった19年は620トン、20年は476トンと激減し、21年には市漁協所属の大型サンマ船が11月22日に水揚げした約18トンにとどまった。
厳しい見通しを踏まえ、銚子の魚を扱う鮮魚店「魚道」の梅原広樹さん(41)は今年の水揚げについて「あきらめている部分はある」と話す。不漁が目立つ以前は銚子の新鮮サンマは秋の看板商品だった。「東北の方で揚がっているがサイズは小ぶりと聞く。漁船の燃料代も大変だろうし、気温が高くて季節感もおかしい。(水揚げがなくても)しかたないかな」と話した。
すしと地魚料理の店「入船寿司」の石川良子社長(62)は「昔のサンマは身が太かった。たくさん揚がる中からいい物を選んで買っていた」と懐かしむ。他で水揚げされたサンマを調達する選択肢もあるが、銚子へのこだわりがあって取り扱わず、サンマ料理は久しく登場していない。現在の水揚げ状況に「寂しいけれど、銚子には他にいろいろな魚が揚がっていることも知ってほしい」と、サンマだけではないとアピールする。
ある干物店では、銚子水揚げのサンマで作る干物が姿を消した。同店従業員によると、客から商品予約の問い合わせはあるものの、地元漁港での水揚げは見通せず断るしかないという。