急性脳症で後遺症も… 新型コロナで重症、10代以下は6人 沖縄 昨年のオミクロン株以降 半数は基礎疾患なし

新型コロナウイルスのオミクロン株が流行した昨年1月1日以降、感染して小児集中治療室(PICU)管理の重症となった10代以下の子どもが県内で6人いたことが分かった。4歳以下の乳幼児3人に基礎疾患はなく、うち1人は急性脳症で後遺症が出ている。子どもは新型コロナに感染しても軽症か無症状が多いとされるが、基礎疾患のない健康な子どもでも重症化することがあり、医療関係者は注意を呼びかけている。
このほか、県内では10歳未満と10代2人の死亡も確認されている。県内で唯一のPICUがある県立南部医療・こども医療センターの張慶哲医師(小児感染症内科)は「感染が広がれば重症化する子どもも増える。沖縄で春に再流行する可能性は高く、ワクチン接種などの感染予防を検討してほしい」と話した。
重症6人の年齢は「0歳」2人、「1~4歳」1人、「5~11歳」2人、「12~18歳」1人。
0歳の2人は基礎疾患がなく、肺炎と無呼吸を起こして人工呼吸器を装着した。1~4歳の1人も基礎疾患はなく、けいれんが止まらなくなって脳炎を発症。人工呼吸器や脳保護療法などで一命は取り留めたが後遺症が出ている。
5歳以上3人のうち2人は、日常的に医療的ケアが必要な基礎疾患があり、感染をきっかけに肺炎を起こした。残る1人は基礎疾患はなかったが、コロナ以外の病気の発症で集中治療が必要となり、入院前に検査をしたところ感染が分かったという。ワクチン接種歴は、不明の1人を除き、全員が未接種(重症化した当時に接種対象外を含む)だった。

国立感染症研究所が昨年12月に発表した20歳未満の死亡例の報告によると、昨年1月1日から9月末までに全国で感染後に亡くなった20歳未満は62人いた。このうち不慮の事故を除いた内因性の死亡は50人。基礎疾患は「なし」が29人(58%)で、「あり」を上回った。
死亡の経緯で最多は急性脳症など中枢神経系の異常が19人(38%)。次いで急性心筋炎など循環器系の異常9人、呼吸器系の異常4人など。年代別は「5~11歳」が最多20人(40%)で、「1~4歳」16人、「0歳」8人などと続いた。(社会部・篠原知恵)
■流行備え感染対策を 県立こども医療センター 張慶哲医師 新型コロナウイルスに感染して重症に至る子どもの割合は低いが、全体の感染者が増えれば、必然的に重症化する数は増える。そして、基礎疾患のない健康な子どもにも重症化する可能性がある。
子どもの場合、オミクロン株になって味覚や嗅覚障がいの訴えが減り、発熱や咽頭痛、熱性けいれんが増えた。季節性インフルエンザに似ている印象もあるが、新型コロナの怖さは、現時点で季節に関係なく通年で一定の流行があり、拡大時は一気に広がるところだ。
年末年始の「第8波」は、沖縄は全国に比べて低かった。昨夏に子どもを含め多くの県民が感染し、抗体を持ったためと考えられる。県内の状況やワクチン接種率の低さを踏まえると、抗体の濃度が下がる今春にも、再び大きな流行を迎える可能性は高い。

4月以降は学校でマスクなしを「基本」にする方針というが、感染力の強いオミクロン株で、リスクの高い場面を含めてマスクを外せば流行は加速する。
子どもの発達への影響を考え、マスクの着用を最小限にしたいという考えも理解できる。ただ、感染をフリーハンドで許容するには、子供にとってリスクがあまりに大きい。12歳未満のワクチン接種は、発熱などの副反応が大人に比べて少ない一方、効果は十分とのデータもそろってきた。類似の重症化リスクがある季節性インフルエンザの子どもの接種率は3~4割だ。今春の流行に備え、接種を含めた感染対策について、今改めて各家庭で考えてほしい。(談、小児感染症内科)

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