米軍は、空軍・海軍・海兵隊に配備されている世界中のオスプレイの飛行を一時停止すると発表した。 鹿児島県・屋久島沖で起きた米空軍の輸送機CV22オスプレイの墜落事故を受けた異例の措置だ。機体の不具合が事故につながった可能性があるとしている。 昨年6月、米カリフォルニア州で起きた海兵隊のMV22オスプレイ墜落事故では、乗員5人全員が死亡した。 事故の調査報告書は、人為的ミスの可能性を否定し、クラッチの作動不良が事故につながったと結論付けた。 過去最悪となる8人全員の死亡が認定された今回の事故についても、機体そのものに問題があった可能性が浮上したことになる。 オスプレイは開発の段階から事故が相次ぎ「構造的欠陥」を指摘する声が絶えなかった。ここへ来て再浮上した、機体への疑問符。 南西諸島では離島防衛の名の下に急速に軍事化が進み、自衛隊や米軍による民間の空港・港湾利用が活発化している。機体の問題があらためて浮上したことは、住民の不安をかき立てずにはおかない。 CV22の飛行は事故後、停止された。一方、普天間飛行場ではこの1週間、MV22の離着陸が繰り返され、政府は有効な手を打てなかった。 米軍機の運用に伴う事故に対しては、当事者である米軍だけでなく、日本政府にも責任がある。 事故で明らかになったのは、どこに目が向いているのか分からないような、政府の頼りなさだ。■ ■ 政府は当初、米軍から情報を得て「不時着水」と表現。その後、米軍が「墜落」としたため表現をあらためた。 木原稔防衛相は米軍に対し「安全が確認されてから飛行を行うよう」要請し、「飛行停止」という言葉を使わなかった。 米国では国防総省のシン副報道官が「公式な要請は受けていない」と発言し、食い違いが表面化した。 あいまいな要請が混乱につながったのである。 名護市安部の海岸にオスプレイが墜落した事故の際は、当時の岸田文雄外相も稲田朋美防衛相も「安全が確認されるまでの飛行停止」を米軍に要請している。 それなのになぜ、今回「飛行停止」という言葉を使わなかったのか。 この1週間、普天間飛行場で住民の不安を顧みず離着陸が続いたのは、「過剰忖度(そんたく)」が招いた結果でもある。■ ■ 自衛隊の島しょ戦略は日米の一体的対処が前提になっている。そのため自衛隊は米軍弾薬庫を共同使用し、米軍は自衛隊基地を共同利用するなど、さまざまな場面で一体化を進めている。 沖縄の軍事化は、住民生活に大きな負担となる。安全保障が日常を脅かすという逆説があらわになるからだ。 防衛省の対応には、米軍機の運用に支障がないよう最大限に配慮する、という姿勢があからさまに見られた。 普天間飛行場の危険性を除去するには、オスプレイの一日も早い撤去が必要だ。