【鈴木貴博連載】円安影響で「年末旅行」選択肢に異変 ハワイと…の画像はこちら >>
「ここは本当にハワイみたいだねぇ」
しきりに感心をしているのは年老いた私の母です。コロナも明けたので家族旅行に行きたいという話になりました。第一希望はハワイだったのですが、年齢と体調を考慮すると8時間のフライトはちょっときついのではないかということに。
それで向かったのが沖縄の北谷です。米軍基地が返還された海沿いの跡地に、アメリカンビレッジという名前の海外のような雰囲気の街が作られています。隣接するホテルの部屋からも青い海が見えて、国内旅行でありながら気分はなんとなく海外です。
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長年、ハワイやグアムなど南の島で冬の休暇を楽しんできた私から見ても、沖縄はなかなかにアメリカナイズされた南のリゾート地です。南国に行くと気候のせいか、塩分と糖分がたくさん欲しくなります。ハワイではグワバジュースをよく飲みますが、沖縄に来るとついつい飲むのがシークワーサージュース。水分補給にぴったりです。
ハワイはアメリカ50州の中で一番SPAMが売れる州だといいます。あの塩分たっぷりのポークランチョンミートがハワイの気候の下ではぴったりの美味しさ。コンビニで「SPAMにぎり」を買って食べるわけです。沖縄ではこれと同じコンセプトの食べ物として「ポー玉(ポークたまご)にぎり」が人気です。SPAMが卵焼きと一緒になって、ご飯にサンドイッチのように挟んであるのが特徴です。
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さて、実は今年の年末旅行、旅行会社の人に話を聞くと「沖縄が海外と同じぐらい人気」だといいます。その理由は円安です。ハワイに行くと何もかも高いのですが、沖縄に出かけると逆に何もかもが安い。予算を考えたら沖縄が合理的だと考える人が増えているのだそうです。
たとえば沖縄で嬉しいのがアメリカ風のステーキハウスがたくさんあること。地元の大手チェーン「88ステーキ」ではテンダーロインステーキが本当に柔らかくて美味しいのですが、3人で食事をしても1万円でおつりが来ます。これがハワイならひとり1万円は確実にかかるので、コスパを考えたら沖縄は3倍お得です。
そうやって考えたら、現地のアクティビティもレンタカー代も、お土産代も飲食代も、なにもかもが円安の影響なしに楽しめる南の島として今や沖縄は最強かもしれません。
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さて、年末旅行でもうひとつ人気の行き先は関東だそうです。特に大人気なのが東京だといいます。その理由は「非日常性」。
そうなのです。私たちが海外旅行に求めるのは非日常性。東京に住んでいると気づかないのですが、関西や九州、東北や北海道の人たちから見れば、いつの間にか現代的な東京は非日常性にあふれた都市になっているのです。
たとえば新宿の歌舞伎町は東京を代表する歓楽街。かつてはちょっと怖いイメージもあったのですが、最近はインバウンドの外国人に大人気のエキゾチックな街へと様変わりしています。最近開業した歌舞伎町タワーには、ネオンが色鮮やかな屋台村の中央でDJがノリノリの音楽をかけまくっています。
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若者の街だった渋谷は、再開発で「グレーターシブヤ」として街全体が広がっています。グレーターシブヤとは原宿、恵比寿、中目黒、代官山、青山を含めた広大なエリアですが、そのいずれもが再開発されて新しい都市へと変貌しています。
若者文化を探訪したければ裏原宿、通なグルメを探したければ恵比寿、目黒川の桜並木を散歩したければ中目黒といった形で、エリアの中にもさまざまな個性があって、何度訪れても飽きがきません。
さて、話をまとめるとこの話の根本原因は円安です。円安のおかげで日本人からみれば安価な海外旅行はすでに手に入らなくなってしまいました。しかし振り返ってみれば世界から見て今、一番素敵な観光地は日本なのです。ということでインバウンド観光客にも人気の日本は、実は日本人から見てもお得な旅行先だというのが今回の結論です。
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Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「今人気の旅行先」をテーマにお届けしました。