認知症のねことの暮らしが教えてくれた”移り変わるいのち”と向き合うこと

ボンちゃんの“変化”に気がついたときのことを改めて伺ってもよろしいですか?
明らかにおかしいと思ったのは、ぐるぐる回り始めてからです。今までに見たことがない動きだったので、衝撃でした。それから夜泣きもありましたね。
急にぐるぐる回り始めたら、どうしていいかわからなくなりますよね。
そうなんです。抱っこしたらやめるんですけど、私の腕のなかからまた床に降りようとして……。
そんなふうになっちゃうんだ。
落ち着いたときに寝かしつければ、そのまま寝てくれることもあるんです。でも、むくって起きて、またタッタッタッタッと歩き出すことも。
予測がつかない動きをするんですね。
はい。高い場所でも低い場所でも関係ないんですよ。とにかく足がつくところは壁伝いにズリズリ行くので。広くない我が家を最大限に広く使って歩いてましたね。
ぐるぐる回る理由に、何か思い当たる節はあったんですか?
ぐるぐる回るのは、人間の“一人歩き”に近いのかもしれないと思っていたんです。動物の場合は、人間と違って、無目的と言われています。でも、私は何か目的があるんじゃないかと考えています。
人間の一人歩きも昔は意味なく歩いていると考えられていました。今は、「一人歩きは過去の記憶に関係しているのではないか」と言われていますよね。
例えば、ある認知症のおばあちゃんは、子どもの幼稚園のバスが来ていた4時ぐらいになると、飛び出していってしまう。そのことを理解したうえでおばあちゃんに接すると、安心して行動にも変化がある、と。それと同じように、ぐるぐる回る理由がねこにもあるんじゃないかって。
うん、ありえますね。
長年一緒に暮らしていたのに、ボンの徘徊の理由は”想像”することしかできませんでしたが……。