牛もつ、キャベツ、にらなどの食材を中心をした鍋料理「もつ鍋」。もつの旨味が野菜類、特にキャベツにじんわりと染み込んで、たまらなく美味しいですよね。僕、大好きなんですよ、もつ鍋。
ところで、僕の好きなもつ鍋専門店のひとつに、東京池袋にある「もつ鍋帝王 ふるさと」があります。というか、ここでもつ鍋の美味しさに目覚めたと言ってもいい。
で、ふるさとのもつ鍋の基本構成はというと、牛もつ、キャベツ、にら、にんにく、唐辛子、そして豆腐というシンプルなもの。そこに加えるつゆもまた、和風の醤油だしっぽいような、深みはあるけれども比較的シンプルな味わいなんです。
そこで我が家でもかつて、同様の食材と、めんつゆのみの味付けで作ってみたところ、これが家もつ鍋としてはじゅうぶんすぎるほどに美味しかったんですよね! 以来、我が家の定番レシピとなりまして、もしご興味があればぜひ作ってみてください。
で、ですね。そのもつ鍋をもっと手軽に、かつおつまみ仕様にアレンジしてみたのが、今回の「焼きもつ鍋」。こってりとした牛もつの脂、旨味が鍋よりもむしろよ~くキャベツに染み込むくらいで、たまらない味わいなんです。
○基本は食材を炒めるだけ
さて、牛もつですが、「シマチョウ」と呼ばれる、こういう部位を買ってきましょう。大きめのスーパーにならばたいていあると思います。
ホルモン焼き屋さんなどの場合、このもつについたたっぷりの油を網焼きで落としながら焼いていくんですが、鍋の場合は、その旨味を野菜に吸わせることが醍醐味。その醍醐味がさらに凝縮されてしまうという意味において、カロリー的な意味ではよりおそろしいのが、この焼きもつ鍋。
さっそく大きめのフライパンか深めの鍋に牛もつ、お酒を少し、そしてにんにくと鷹の爪を放り込み、弱~中火の中間くらいの火加減で、じっくり焼いていきましょう。このとき、「余分な脂を落とす」とか「お湯で薄める」とかの概念は捨て去ってしまいましょう。
火が通りだすと同時に、たっぷりの脂がもつからにじみでてきます。
そうしたら、ざく切りにしたキャベツを、こんなに入れて大丈夫? ってくらいの量、投入します。上下を混ぜながらしばらく根気よく待っていると、もつの脂を吸ったキャベツがしんなりとし、驚くほどかさが減ってきますので。ここでめんつゆを加え、もう一度全体を混ぜます。
この時点で、キャベツが吸いきれなかった脂がまだたっぷりと、鍋底でぐつぐつしているはずなので、食材を寄せてスペースを作り、カットした豆腐をそこで温めていきましょう。
豆腐があっつあっつになったら、カットしたにらと、あれば系唐辛子などをのせて、はい完成。
食べるにあたって全体をざっくりと混ぜると、予熱でにらに火が通るので、さっそくビールとともにいっちゃいましょう!
ぷりぷりの牛もつ、ふわふわの豆腐、しゃきしゃきのにら、そして、とろりと甘く、もつの旨味を吸いまくったキャベツ。もうね、フライパンでささっと作れる炒めもの的な簡単さでありながら、絶品にもほどがあるんですよ、これ。
あ、そうそう。ところで冒頭で話した、もつ鍋帝王 ふるさとで僕の好きな鍋のシメといったら、だんぜん中華麺! というわけで、最後に残ったたっぷりの脂と、ほんの少し残した具材。それらを鍋かフライパンに戻し、水を加えて中華麺をゆで、めんつゆで味を整えれば……。
これがね、ま~じ~で! なんでこの味が世のラーメン屋さんの主流じゃないんだろう? と疑問に感じるくらいにうまい。余裕があればぜひ、シメまで楽しんでくださいね。
……あ、今、「最後にお湯を足したら、それはもはや“焼き”じゃなくて単なる“もつ鍋”じゃん!」と思った方がいらっしゃるかもしれません。あのですね……正直、できればそこには気づかないでほしかったなぁ……。
○【材料】
・牛もつ:200g
・キャベツ:1/3個
・1/2束
・豆腐:1/2丁
・にんにく:2、3個
・鷹の爪:1、2本
・酒:大さじ1
・めんつゆ(4倍濃縮):大さじ3
※すべての分量は目安です。お好みで調整してください。
○【作りかた】
1.大きめのフライパンか鍋を、弱~中火くらいにかけ、牛もつ、酒、輪切りにしたにんにく、鷹の爪を入れて焼いてゆく
2.もつから脂が出てきたら、ざくぎりにしたキャベツを加え、たまに上下を返しながらとろりとするまで火を通す
3.めんつゆを加えて再度混ぜ、食材を寄せて開いたスペースに豆腐を入れる
4.全体によく火が通ったら火を止め、5cmほどの長さにカットしたにらと、あれば糸唐辛子をのせる
5.シメに水、めんつゆ適量、中華麺を加えて煮、ラーメンとして食べるのもおすすめ
パリッコ ぱりっこ 1978年東京生まれ。酒場ライター、漫画家/イラストレーター、DJ/トラックメイカー、他。酒好きが高じ、2000年代後半より酒と酒場に関する記事の執筆を始める。著書に『酒場っ子』『つつまし酒』『天国酒場』など。 この著者の記事一覧はこちら