クルママニアの安東弘樹さんは現在、プラグインハイブリッド車(PHEV)に興味津々らしい。現在の愛車であるレンジローバー「ヴェラール」からの買い換えもありえる? どこが気に入っているのか、メルセデス・ベンツのPHEV「GLC 350e」に乗りながら聞いてみた。
安東さんがPHEVにひかれる理由は?
最初にPHEVとは何かをおさらいしておきたい。PHEVというのは、外部から充電できるハイブリッド車(HV)といった感じのクルマだ。エンジンが付いているので、ガソリンを給油しておけば普通のクルマと同じように走るのだが、HVよりは大きい(電気自動車=EVよりは大抵の場合小さい)バッテリーとモーターも積んでおり、充電すればEVのようにも使える。バッテリーの電力だけで走っていればガソリンはほとんど(1滴も?)減らないのが売りだが、自宅で普通充電できないと「うまみ」が感じにくいクルマでもあるので、どう評価していいのかがなかなか難しいクルマだ。
安東さんは輸入車が一堂に会する日本自動車輸入組合(JAIA)主催の試乗会でメルセデス・ベンツのPHEV「GLC 350e」をチョイス。マイナビニュースが試乗に同行した。
マイナビニュース編集部:安東さんは今、ヴェラールのディーゼルエンジン車に乗っていらっしゃいますが、PHEVへの乗り換えも選択肢に入ってきましたか?
安東弘樹さん:そうですね。去年くらいまでPHEVは選択肢に入っていなかったんですが、ここ最近、いろいろなメーカーからバッテリー容量の大きいPHEVが登場し始めているんです。特にドイツ勢が顕著ですね。
例えばBMW「X5」のPHEVは29.5kWh、メルセデスの「GLC 350e」に至っては31.2kWhで、これは日産自動車の軽EV「サクラ」の1.5倍強なんです。バッテリーの容量が大きくなっているので当然ですが、フル充電時にモーターだけで走れる距離もどんどん伸びています。こうなると、使い勝手としても、かなり現実的な選択肢になってきますよね。現時点で考えうる、最高のソリューションかもしれません。
しかもメルセデスは、PHEVでも急速充電ができる(日本の急速充電規格CHAdeMOに対応)仕様にしています。日本向けのローカライズがスゴイ。BMWでいえば、クルマのサイズでいうと「X3」のPHEVが私には最適なんですけど、X3のPHEVでは本来なら選びたい四輪駆動の設定がありませんし、急速充電にも対応していません。X5だと幅が2,005mmと大きすぎるので、日本では駐車スペースに気を使うという問題がでてきてしまいます。
編集部:安東さんは都内での仕事が多いと思いますが、千葉県のご自宅からは往復100kmくらいとのことなので、GLCのPHEVなら、うまくするとガソリンを使わずに通勤ができますね。しかも、ガレージには太陽光発電設備とクルマの充電器を設置されたとの話ですから、充電の電気代はゼロ円。交通費ゼロ生活が実現しますね。
GLC 350eは便利機能が満載! ただし、アレが付いていない…
編集部:GLC 350eに乗ってみて、どんな感じですか?
安東さん:ドライブモードを「EL」(エレクトリック)にしているんですが、出発してから今まで、まったくエンジンがかかっていないですね(この時点で20kmほど走行)。
ETCゲートを抜けたら、ちょっとペダルを踏んでみますね……あ、エンジンがかかっちゃった。
編集部:このクルマには、これ以上ペダルを踏んだらエンジンがかかるということを知らせる「インテリジェントアクセルペダル」という機能が付いているみたいです。
安東さん:確かに、さっき加速したとき、ひっかかりといいますか、ペダルに抵抗を感じるポイントがありました。抵抗を無視して踏み込むとエンジンがかかるわけですね。
編集部:PHEVでEV走行しているときは、なるべくエンジンをかけたくないという気持ちになりますから、これはいい機能ですね。
安東さん:おっしゃる通りです! それと、このクルマは電費自体も良好ですね。あとは、ステアリングに付いているパドルで回生ブレーキの減速力を選べるのも、いいと思います。回生の強さが3段階で調整できます。
安東さん:このクルマ、いいな……。
編集部:欲しくなりましたか?
安東さん:あとは、シートベンチレーションさえ付いていれば……。
編集部:装備は充実していますが、確かにシートベンチレーション機能が付いていないですね。あの機能、お好きですもんね……。
(※編集部注)シートベンチレーションというのは、シートに小さな穴がたくさん開いていて、そこから空気を吸い取ってくれる機能のこと。体とシートが密着している場所から熱気を吸い取ってくれるので、夏に涼しいのはもちろんのこと、下手をすれば冬場でも重宝する便利な機能だ。
編集部:クルマの機能・装備で安東さんが譲れないものは何ですか?
安東さん:シートヒーター、シートベンチレーション、パノラマルーフ、ステアリングヒーターあたりですかね。家族も乗るクルマには、リアのシートヒーターも付いていてほしいです。いつも後席に座る冷え性の妻が「おしりポカポカシートって気持ちいいね!」と気に入っている機能なので(笑)。
編集部:シートベンチレーションの有無が、そのクルマを買うかどうかの決定的な材料になりえるんですか?
安東さん:私の場合は、決定的になりえます! 特に夏場だと、レザーシートでベンチレーションがないクルマは地獄なんですよ。日本の夏を甘く見てもらっては困ります!
しかもこれ、1,000万円クラスのクルマじゃないですか? さらに悔しいのが、YouTubeなどで海外のジャーナリストの動画を見ていると、GLCのほぼ全てのモデルにシートベンチレーションとステアリングヒーターが付いているんですよ! 海外仕様には設定があると思うと、余計に悔しい。
編集部:ほかの部分が気に入っているだけに、さらに悔しい?
安東さん:そうですね。パノラマルーフも開閉できる、ルーフのシェードも付いている、ステアリングコラムも電動で調整できる、回生ブレーキもいい塩梅だし……はあ、クルマ選びというのは、うまくいかないものですね……。
思い切って、シートベンチレーションをいったんあきらめてみようかな?
編集部:本当ですか?
安東さん:……でも、日本の夏は年々、暑くなってきてますもんね。どうしようかなー!
そうだ、ちょっと意地悪な検証をしてみよう。ハイ、メルセデス! シートベンチレーターをつけて。
メルセデス・ベンツのインフォテインメントシステム「MBUX」が機械音声で回答:この車両ではシートベンチレーターは利用できません。
編集部:(笑)。ただ、MBUXの聞き取り能力と会話の理解力が高いことは確認できましたね。
安東さん:はー……。ほかに優れているところがあるとわかっただけに、ある意味、更にガッカリです。
編集部:シートベンチレーションが付いていないこと以外に気に入らないポイントがたくさん見つかれば、そこまで落ち込まなくても済んだのかもしれませんね。ほかがよかっただけに、余計に残念です。
でも、「シートベンチレーションをあきらめてみようかな」って、確か、おっしゃってましたよね?
安東さん:そうでした(笑)。悩みどころですね。
安東弘樹 あんどうひろき 1967年10月8日生まれ。神奈川県出身。2018年3月末にTBSを退社し、フリーアナウンサーとして活躍。これまでに40台以上を乗り継いだ“クルママニア”で、アナウンサーとして初めて日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。 この著者の記事一覧はこちら