「あれ、胴体が…」思わず2度見の“変わり種ジャンボ機”なぜ生まれた? その能力と隠れた功績とは

世界で最も有名な旅客機のひとつである「ボーイング747」には、やけに胴体が短い不思議な形状のモデルが存在します。なぜこのような形になったのでしょうか。
「ジャンボ・ジェット」ことボーイング747シリーズは、世界で最も有名な旅客機のひとつで、生産終了となった2024年現在も根強いファンがいる機種です。特徴はその前方のみが“コブ”のように2階建てとなった形状と、輸送力を確保する長い胴体です。
しかし、普通の747と比べても著しく胴体が短い、不思議な形状の747も存在します。そのモデルは「747SP」。なぜこのようなモデルが誕生したのでしょうか。
「あれ、胴体が…」思わず2度見の“変わり種ジャンボ機”なぜ生…の画像はこちら >>NASAとDLRが保有していたボーイング747SP、「SOFIA」(画像:NASA)。
747SPの特徴は、基本シリーズ(747-8以外のシリーズ)より約14m短い胴体にも関わらず、ほかのシリーズより垂直尾翼、水平尾翼が大きいこと。本来の747のルックスとは、明らかに違うものです。
この機はかつてあったアメリカの巨大航空会社パン・アメリカン航空を初期発注者「ローンチカスタマー」として開発されたものです。
ここで求められたのは、航続距離の長さでした。当時、たとえば東京~ニューヨーク線は747で直行便を飛ばすことができず、一度どこかで給油のための着陸を余儀なくされていたのです。
そこで、747SPは航続距離を伸ばすべく、初期型の機体のベースデザインそのままに、胴体を短くするという手法をとりました。燃料の搭載量はそのままに、胴体自体を短くし、軽くすることで航続距離をあげ、それまでより長距離飛行を可能にするためです。なお、胴体を短くした影響で、舵の効きが従来より悪くなるという懸念への対策として、ふたつの尾翼はむしろ大きくなっています。
747シリーズの初期型である747-100の航続距離は8890kmでしたが、ボーイング747SPは、それよりも1500km以上長い1万656kmの航続距離を実現しました。パンナムに納入された初号機は1976年、アンカレッジ(アラスカ)経由が一般的だった東京~ニューヨーク線で直行便を就航させます。
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JALのボーイング747-200B(画像:JAL)。
しかし、この747SPの売れ行きはイマイチで、製造機数は45機にとどまりました。というのも、747初期タイプの形をほぼそのままに、燃料タンク容量増加とエンジン変更で航続距離を延ばした改良型の「747-200B」が登場したためです。同じくらい(厳密には-200Bが多少上回る)の航続距離でありながら、人は多く乗せられないということで、747SPの需要は衰退します。
しかし、この747SPのシルエットは、そののちのシリーズにも引き継がれる、思わぬ副産物を生み出します。
同機の形は、「ジャンボ」の特徴である2階席のコブ(アッパーデッキ)はそのままに、1階の部分にあたる胴体を短縮したものでした。つまりコブと垂直尾翼の距離が、従来のモデルより近いのです。この形状が巡航中、空気抵抗を減らす効率的な形であることが判明しました。
この結果に基づいて、コブを伸ばすことで、同様の効果が得られるのではと開発されたのが、アッパーデッキ延長型の「747-300」です。この長いコブの「ジャンボ」は、ベストセラーの「ハイテクジャンボ」こと747-400や、最新型の747-8にも引き継がれています。
なお、747SPの「SP」は、「スペシャル・パフォーマンス」の略語とされています。