被告から届いた手紙「気が動転し財布持ってきた」…夫婦が殺害され財布奪われた事件 2度目の裁判員裁判始まる

名古屋市南区で6年前、80代の夫婦が殺害され財布が奪われた事件で、差し戻しの裁判員裁判が30日から始まりました。この事件の裁判は、強盗殺人の成立を巡り、異例の経過をたどっています。 事件が起きたのは6年前。(リポート)「名古屋市南区のあちらの住宅で、この家に住む高齢の夫婦とみられる遺体が見つかりました」 2017年3月、名古屋市南区の住宅で、大島克夫さん(当時83)と妻のたみ子さん(当時80)が、首を刃物で刺され殺害されているのが見つかりました。
事件から3日後、警察署に自首してきたのが、近所に住む松井広志被告(48)でした。
松井被告は、大島さん夫婦を殺害して、現金1200円ほどが入った財布を奪ったとして起訴されました。罪名は「強盗殺人」。ところが、裁判は異例の経緯をたどります。 松井被告からFNNに届いた手紙には、こう綴られていました。
<手紙の内容>「何がデタラメかと言いますと、してもいない強盗目的を捏造して作り出す事です。色々嫌なことが重なり、気がつけば2人を殺めてしまい、気が動転してしまい、被害者宅にあった財布1個を持ってきちゃったんです」 殺害の後、衝動的に財布をとったと主張したのです。 一審の裁判員裁判でも、弁護側は強盗目的を否定。一方、検察側は「部屋を物色した跡もあり、金品を奪う目的だった」として死刑を求刑しました。 一審判決を待つ中、拘置所で記者と面会した松井被告が語った言葉です。<松井被告>「99%極刑が来るなとは思っていました。死刑が来るんじゃないかと思っています。控訴するつもりですが」

その後、一審・名古屋地裁が下した判決は、無期懲役でした。<名古屋地裁の裁判長>「殺害後に財布を盗むことを思いついたとする被告の供述は否定できない」 強盗殺人ではなく、殺人と窃盗の罪を認定したのです。しかし、二審・名古屋高裁は異なりました。
<名古屋高裁の裁判長>「強盗目的を認めなかった原判決には事実誤認がある」 一審判決を破棄し、裁判員裁判のやり直しを命じました。
そして、30日から始まった2度目の裁判員裁判。松井被告は1年ほど前からすい臓などにガンを患い、車いすで出廷しました。<松井被告>「弁護士さんに全部お任せします」 続く冒頭陳述で、検察側は「刃物を持って自宅を出た時点で金品を奪う目的だった」として、強盗殺人罪を適用して死刑とすべきとしました。 弁護側は「『逃走するなら金が必要』と考え、金額も確認せず持っていった」と、改めて殺人と窃盗罪の適用を求めました。