日本の警察がなぜ「アメ車」? 実は特殊部隊も使用 G7広島サミット“最高レベル警備”の渦中に

G7サミットの警備で、全国からさまざまな警察車両が広島市に集まっていましたが、アメリカ大統領やウクライナ大統領の車列に見慣れない「アメ車」が混ざっていました。日本警察が保有する特殊車両の用途について調べてみました。
広島市で2023年5月19日から21日まで開催されていた第49回先進国首脳会議、通称「G7広島サミット」。それに参加するために来日したアメリカのバイデン大統領の車列は、日米合わせて40台余りで構成されていましたが、そのなかに、アメリカ車ながらも日本のナンバープレートを付けた車両が混ざっていました。
トヨタ「クラウン」や日産「フーガ」がベースの、いわゆる警護車とはいささか異なる趣きのこのクルマ、全身真っ黒ながら、赤色灯を付けて警護についているため、警察関係の車両であることはわかります。そこで、警察に詳しい人物に聞いたところ、実は非常に重要な役割を担っていたようです。
日本の警察がなぜ「アメ車」? 実は特殊部隊も使用 G7広島サ…の画像はこちら >>アメリカのバイデン大統領の車列にいた日本ナンバーを付けたシボレー「エクスプレス」(深水千翔撮影)。
説明によると、このクルマはシボレー「エクスプレス」をベースにした警護用車両とのこと。2008(平成20)年ごろに警視庁や大阪府警、福岡県警、北海道警、沖縄県警などに配備されたもので、警護指揮車などで用いられることが多いということでした。
アメリカを始めとした特定国の外国要人の車列に付くことが多いそうで、昨年(2022年)5月に都内で行われた日米豪印4か国(クアッド)首脳会談に出席していたバイデン大統領の警護車列を見返してみると、確かに同じ車両を確認することができました。
警護指揮車は、その名のとおり車列に随行して警護の指揮を執るクルマです。車列に入っている各警護車両(警護員)だけでなく、沿道警備についている「沿道員」と呼ばれる警察官まで含め、あらゆるところと無線でやりとりし、さらには状況に応じて映像も収集することで状況を逐一把握し、指示を出すといいます。
同様の車両は皇室の警衛でも用いられているそうですが、こちらはあまり目立たず、それでいて大人数が乗務できるマイクロバスやトヨタ「ハイエース」、日産「キャラバン」ベースの車両が用いられることが多いとのこと。ほかにも、皇宮警察や神奈川県警などには小型の日産「エルグランド」ベースの警護指揮車が配備されているとのハナシでした。
今回、バイデン大統領の車列に加わっていたシボレー「エクスプレス」ベースの警護指揮車ですが、前出の警察に詳しい人物によると、ガラスは防弾仕様になっており、左右側面と後部には銃眼(ガンポート)も設けられているそう。
また、ほぼ同じ仕様ながらサイドステップとルーフに手すりを備えたタイプもあり、こちらは突発事案に対応するための、いわゆる銃器対策用ではないかとのことでした。
なお、同様の車両は遅れて来日したウクライナのゼレンスキー大統領の車列にも混ざっていたと言います。
教えてもらった車両を確認したところ、ゼレンスキー大統領の車列に入っていたのは、フォード「トランジット」をベースにした警護車でした。
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G7広島サミットの期間中に見かけた、日本ナンバーを付けたフォード「トランジット」(深水千翔撮影)。
こちらは前述のシボレー「エクスプレス」ベースの警察車両の後継として導入されたもので、やはり警視庁や大阪府警、福岡県警、愛知県警などに入っているとのこと。「エクスプレス」と同じく防弾仕様ですが、赤色灯は「エクスプレス」がマグネット仕様の着脱式なのに対して、「トランジット」は反転式であり、そのためのかさ上げがルーフ上部に設けられています。
これら車両は警護実施レベルの高い要人の車列に入ることが多く、だからこそ、前述のアメリカ・バイデン大統領の車列に混ざっていたシボレー「エクスプレス」と同様、ウクライナ・ゼレンスキー大統領の車列にもフォード「トランジット」が配置されていたものと考えられます。
なお、来日したゼレンスキー大統領の警護は最高レベルであったと言われており、一部メディアが報じたところによると、彼の車列には特殊部隊「SAT」が乗った車両も含まれていたとか。警察に詳しい人物のハナシでは、おそらく、このフォード「トランジット」が該当する車両になるのではないかとのことでした。
大過なく終わった今回のG7広島サミット。この後も栃木県(男女共同参画・女性活躍担当大臣会合)や三重県(交通大臣会合)、香川県(都市大臣会合)、大阪府(貿易大臣会合)などではG7関係閣僚会合が開かれる予定です。
山場こそ越えたものの、警察関係者の心が休まる日はまだまだ先のようです。