「八重山の医療は崩壊しかけている」 県立病院、異例の“辞任ドミノ” 引き金となった難題 沖縄

[近景遠景]
沖縄県立八重山病院(石垣市)の幹部らが相次いで辞任を表明したのは、人手不足による人工透析治療に影響が出ている問題をはじめ、隣接する急患用の暫定ヘリポートの継続使用の見通しが立っていないことなど山積する課題が引き金となった。異例の「辞任ドミノ」に、県立病院を所管する県病院事業局だけでなく、県保健医療部も対応に乗り出した。別の病院の幹部も「地域医療をないがしろにしていないか」と行政側の対応の遅れに憤りを隠さない。(社会部・平良孝陽、八重山支局・粟国祥輔)
県立八重山病院では、篠﨑裕子院長のほか、副院長、20年余り勤務した病院幹部も辞表を提出。別の病院幹部も一時、降格願いを出していた。
「八重山の医療は崩壊しかけている」
県立八重山病院の医師らは1月下旬、県議会議長と市議会議長宛てに要望書を提出し、苦渋をにじませた。要望では、5年以上続く眼科医の欠員など人手不足の解消を訴えつつ、ヘリポートや旧病院跡地の利用などについて言及した。
関連記事「命を軽く見ている」石垣市の県立病院、院長辞職へ 幹部も相次いで辞めていく理由…沖縄県・・・ 県立八重山病院の篠﨑裕子院長が県病院事業局に辞表を提出し、3月末に辞職することが31日までに分かった。同院は看護・・・www.okinawatimes.co.jp 暫定ヘリポートを巡っては、市側は区画整理事業への影響があるとして場所の変更を主張しているが、同院は騒音や安全面などを考慮して現在の場所での使用を求めている。

旧病院跡地利用については、市側は老朽化した民間医療機関の移転を求めているのに対し、病院側は職員確保のための官舎の設置を要望している。
同院では約60人の医師のうち県外出身者が3分の2を占める。市出身者は2人。要望書を提出した医師らは課題が山積することで、離職者が増えることを懸念。「八重山病院を支えているのは県外から意識高くやって来た人ばかりだ」とし、医師らが働く環境整備を訴えた。
別の病院のある幹部は、病院事業局の在り方を問題視。「現場が人手不足を訴えても、採算に合わないと省みない。持続可能な地域医療を妨害している」と批判した。
1月19日に取材に応じた事業局の我那覇仁局長は相次ぐ辞任を「それぞれプライベートな事情があるのだろう。一身上の都合がたまたま重なった」と述べるにとどめた。