G7広島サミットの最終日、来年議長国となるイタリアのメローニ首相の姿が議場になかった。イタリア北部で起きた豪雨に伴う洪水被害への対応で急きょ帰国したからだ。イタリアに限らず、いま世界では洪水、干ばつ、山火事などの異常気象による災害が続出している。もちろん、原因は地球温暖化が止まらないことだ。
国連専門機関の世界気象機関(WMO)は5月17日、世界の年間平均気温が2023~27年の5年間で、産業革命前と比べ1・5度以上高くなる確率が66%という予測を公表した。地球温暖化防止の国際枠組みであるパリ協定は、今世紀末の気温上昇を1・5度に抑える目標を掲げている。そうしないと地球が壊れるからだ。つまり、今後5年以内に3分の2の確率で、地球が壊れるということだ。
だから、G7で最も真剣に議論すべきは、環境問題だったのだが、現実にはほとんど成果は得られなかった。その理由は、議長国の日本が「環境後進国」になっているからだ。実際、発電で排出する温室効果ガスは、日本がG7の中でトップになっているのだ。
なぜ日本が環境対策に後れを取っているのか。私は、大手電力会社の利権が壁になっているのだと考えている。日本の気象条件を考えると、急速に増やせる再生可能エネルギーは、太陽光しかない。しかも日本の住宅の屋根の9割は空いている状態だ。そこに太陽光パネルを設置したら、その家庭の電力は、ほぼ自給できる。しかしそうなったら、電力会社は劇的な売り上げ減に見舞われる。さらに電力会社の最大の収益源である原発の再稼働が危ぶまれてしまうのだ。
地球環境が壊れるのを取るのか、電力会社の経営を取るのか、いま政治に求められているのは、エネルギー基本政策の選択だ。
(経済アナリスト・森永卓郎)