【横浜・女子大生刺殺】「女にフラれると『自殺する』とLINEに」…親友が語った伊藤龍稀容疑者(22)の素顔と複雑な家庭環境「親に冷たくされ家出、仕事を転々として蒲田の飲食店で出会ったのが紗菜ちゃんでした」

横浜市鶴見区のマンション駐車場で6月29日午前、住人の大学1年生、冨永紗菜さん(18)が刺殺された事件で、神奈川県警が殺人容疑で逮捕した同区の伊藤龍稀容疑者(22)が事件直前に冨永さんの自室に侵入していたことがわかった。別れ話のもつれから、2人のトラブルは県警が何度も対処するまでにこじれており、伊藤容疑者は歪んだ恨みをつのらせていったとみられる。
調べによると、伊藤容疑者は同日朝、合鍵を使って冨永さん宅に侵入したものの、家族に見つかって合鍵を取り上げられて追い出された。その後、伊藤容疑者はマンションの2階階段付近にいるところを複数の住人に見られており、紗菜さんが出てくるところを待ち伏せして持っていた包丁で上半身をメッタ刺しにしたと見られる。2人を巡っては交際時のけんかなどで鶴見署が一昨年から計4回出動。直近は今月22日で、この際に紗菜さんが伊藤容疑者の車内に置き忘れたバッグから鍵がなくなっていることが翌日に判明。同署が家族に鍵の交換をすすめていたという。
小学生の頃から芸能界に憧れ、子役もしていた冨永紗菜さん(知人提供)
偏執的な犯行に及んだ伊藤容疑者とは、どんな人物なのか。横浜市内の中学校で同級生だった男性は、こう当時を振り返った。「龍稀は中学2年の初めくらいに転校してきました。栃木県の方から引っ越してきたはずです。部活動は複数掛け持ちしていたような気がするけど、サッカーに本腰を入れていました。運動神経はかなりよくてサッカーも上手で、ポジションはキーパーだったと思います。外交的で誰とでも仲よくなるタイプで、少年院に入っちゃうような子とも仲がよかったんですよ。本人は全く悪いことはしてなくて、いいヤツすぎるぐらいだったんですけどね。だから校内では結構な人気者でした。マジックに凝ってるときもあって、何かの集まりで校長先生たちにマジックを披露して大盛り上がりしたこともありました」
中学時代の伊藤容疑者(知人提供)
しかし、数年後に偶然再会したかつての「人気者」は、見る影もないほど「ヤンチャ」になっていた。「進学先が違ったので、その後に龍稀が何をしてるか全然知らなかったんですけど、高校を卒業したくらいの時期に横浜でたまたま見かけたんですよ。黒服の格好して夜のお店のキャッチをしてました。髪型も横を刈り上げて前髪は上げて、ヒゲも生やしてて、中学時代と見た目が全然違うから、『あー、グレちゃったんだ』って思いました。そこにきて今回の事件、犯人がまさか龍稀だとは思わなかったんで、正直鳥肌が立ちました。どこでそんなに人が変わっちゃったんですかね」
中学時代に同じクラスだった別の男性も、伊藤容疑者の変ぼうぶりに驚きを隠せなかった。「転校生なら普通緊張したりするのに、2年の最初に転校してきた伊藤くんは初日から『よろしく!』と元気よくあいさつして、あっという間に溶け込んでいましたね。ひょうきん者で冗談を言ってみんなを笑わせたり、クラスの中心人物でムードメーカーでしたね。授業中に仲のいいメンバーと騒いだり、ふざけたりしていて先生に一番怒られていた印象があります。地元のサッカークラブに入っていたらしくすごく上手で、中学の球技大会でもサッカーで大活躍していました。勉強はあまりできる方ではなくて、女性にモテるイメージもなくて、バレンタインデーでは自分から女の子に『チョコちょうだい!』とせがんでいました。でも、トラブルを起こすような、いわゆるヤンチャな感じではなかったので、今回の事件にはびっくりです」
中学時代の伊藤容疑者(知人提供)
モテないキャラも「売り」にする、ひょうきんな人気者。しかし、親友には一途で思い込みが激しい一面と、精神的な脆さもさらけ出していた。中学時代からの親友だったという男性が表情を曇らせて言う。「ハルキとはもともと同じグループで、3年前まですごく仲がよかったんです。でもあいつは紗菜ちゃんと付き合い出してからだんだん変わっていって、結果的に俺らから離れていきました。紗菜ちゃんとも会ったことがあります。当時はおとなしくて普通っぽい可愛らしい子って感じでした。ハルキは18歳ぐらいから飲食店でボーイとして働きはじめて、2年前に蒲田の飲食店に移り、そこでキャストとして働きだした紗菜ちゃんと知り合いました」伊藤容疑者は出会ったばかりの冨永さんを『紗菜ちゃんは可愛い、可愛い』とぞっこんだったという。「だいぶハマっているな」と、親友だった男性は感じたという。「ハルキって女を好きになると思いつめる傾向があって、『俺のものだから』って感じになるんです。中学時代に付き合っていた女性にフラれたときも、LINEのタイムラインに自殺するだの、もう死ぬ、とかメンヘラっぽいことを投稿してました。そういう一途な部分があるんです。紗菜ちゃんと付き合うようになると、男友達の誘いを断ったりするようになりました。仲間から『家賃が払えないから』とお金を借りて、そのお金で紗菜ちゃんにネックレスを買った挙句、金を返さないようになりました」
変貌した伊藤容疑者(本人SNSより)
さすがにこの時、男性は苦言を呈したと言うが、伊藤容疑者はそれに向き合おうとはしなかった。「結果、ハルキは離れていってSNSで俺らをブロックしました。ケンカもできないヤツだったので、事件で紗菜ちゃんを刺したと聞いたときは本当にびっくりしました。これは推測だけど、『男友達を蹴ってお前を選んだのに』っていう思いもあったんだと思います」
伊藤容疑者は複雑な家庭環境で育ったようだ。親友が続ける。「ハルキの家は中学のころから母子家庭でした。宇都宮の方から引っ越してきた時にはもう母親だけで、妹と弟のほかに一時期不良っぽい感じの義理の父親という人もいました。ハルキは中学時代から『家にいたくない』『親といたくない』という理由で週に2~3回は家を飛び出しては近くの公園に寝泊まりしてました。それで警察沙汰になり、余計に母親から冷たくされていたんです」
中学時代の伊藤容疑者(知人提供)
お調子者だが暴力的ではなく、友達同士でケンカになるとビビって謝る。また、プチ家出を繰り返して騒ぎになることもあった。高校に進学後もこうした状況は変わらなかったという。「あいつは17歳で高校を中退したんですけど、ちょうどそのくらいの時期に母親が山形に引っ越すことになったんです。弟と妹は連れられていきましたが、あいつは置いていかれました。母親は再婚していたので、その関係かもしれませんが、詳しい理由はわかりません。あいつはそれから一度、山形に行って、『母親に冷たくされた』と帰ってきたことがありました。親から愛されてない感じはしましたね」高校を中退し、ひとり取り残された伊藤容疑者は夜の街に生計を立てる術を見出した。「ハルキは最初、鶴見駅の立ち飲み屋でバイトしていました。『建築関係の職場に修行しにいく』と宇都宮に出て行ったこともあったんですが、『仕事がきついから辞めた』とあっという間に戻ってきて、蒲田でボーイをしたり、横浜のキャバクラでもボーイをしていました。最近は内装業みたいなこともしていたと聞いたこともあります。中学時代はフラれた女に暴力を振るうようなやつではなかったので、今回の事件は驚きましたが、紗菜ちゃんのこと、好きは好きだったんだと思います。でもニュースを聞いたときはショックというより、あんなことして許せねえって思いました」
冨永紗菜さん(本人SNSより)
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班