私は新聞読み比べが趣味です。理由は同じテーマなのに新聞によって論調の違いがあるからです。それぞれを読み比べたうえで自分の考えをまとめるときに役立てるのが面白い。しかし、マイナンバーカード問題ではどの社説もほぼ同じです。みんなが「今のやり方はどうなの?」と訴えている。
たとえば読売新聞社説は、6月7日の時点で『保険証の廃止 見直しは今からでも遅くない』と書いていました。《現在、何ら不都合なく使えている保険証を廃止し、事実上、カードの取得を強制するかのような手法が、政府の目指す「人に優しいデジタル化」なのか》最近も《政府は来秋の保険証の廃止にこだわるより、当初の予定通り選択制とし、利便性を実感できる状況を作るほうが得策ではないか》と書いています(7月6日)。
同感です。デジタル化は大事だからこそ、人々が困ったり混乱する「過程」は避けるべきなのに、逆をしているように見える。振り返ると河野デジタル相が昨年10月、唐突に来年秋に保険証を廃止すると表明。そこから混乱が始まった。取得は任意ですが、まるで保険証を人質に取ったような策に驚きました。丁寧に説明する姿勢が求められましたが、先の国会で関連法を成立させた。
そのあとも発覚するマイナトラブル。河野氏は先日はNHKの番組で、マイナンバーカードの名称変更に言及していた。「制度とカードの違いが理解されておらず混乱が生じている」という。この人ごと感はすごい。マイナ問題では説明軽視という従来からの態度がひもづけされている。
政府はマイナカードのデータについて今年の秋までに総点検を行うとしています。でも「点検」が必要なのは、これまでの河野氏の言動や政府の姿勢では? あと、岸田首相の「高みの見物」感も気になるのです。(時事芸人・プチ鹿島)