戦時中も途切れなかった岐阜の「郡上おどり」が4年ぶりの完全復活 妻の遺影を胸に お囃子名人の祖父は5月に…愛する人に思いをはせて

東海地方の夏の風物詩のひとつ岐阜県の「郡上(ぐじょう)おどり」が、15日土曜日に開幕しました。コロナ禍の2020年から去年までは、中止や縮小を余儀なくされましたが、ことしは4年ぶりの通常開催です。
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響き渡る下駄の音。新型コロナに奪われていた“郡上の夏”がこの日、戻ってきました。夜空に唄と三味線の音色も広がり、完全復活です。2023年の「郡上おどり」初日。昼過ぎには郡上市に多くの観光客が…。(郡上木履 店員)「履いているうちに鼻緒が少し緩んでくるので、痛くなくて引き締まった感じがあった方がいい」
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踊るのに欠かせない「下駄」。専門店には心高ぶる観光客の姿が。(客)「3年振りで久しぶりなので楽しみです」「可愛い下駄が欲しいなと思った、ここの下駄は結構かわいい」
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店は1000足以上のストックを用意。“我慢の夏”を3回乗り越えました。(郡上木履 諸橋有斗さん)「この3年間と比べると(客の数は)全然違いますね。やっぱり踊りがないときは本当にさみしいので『やっといつもの夏が戻ってきたな』という感じ」
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こちらは紙岩呉服店。浴衣のレンタルです。着付けの予約枠は1日およそ20人で、早々に埋まりました。
さらに近くのホテルを訪ねると、この日はおよそ120人が宿泊。コロナ禍前の忙しさが戻ってきました。
そして…「令和5年度の郡上おどり開幕を宣言します」午後8時に幕を開けた郡上おどり。江戸時代から続くおよそ400年の歴史。去年11月にはユネスコ無形文化遺産に登録されました。
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戦時中も途切れることなく踊り伝えてきた“夏の当たり前”。ところが、新型コロナの影響で2020年と21年は中止。そして、去年は日程を縮小。通常開催は4年ぶりとなりました。
(参加者)「待ちに待って…楽しみに待っていました」「踊れて楽しい、暑いけど楽しい」(郡上市民)「(去年は)声を出せなかったりマスクの制限があって、十分楽しめなかった。今年からは通常開催に戻ったので、全力で声を上げて盛り上げていきたい」
この日を特別な想いで迎えた人たちがいました。
妻の遺影を胸に踊りを見つめる、愛知県愛西市の柴田勝さん、77歳です。去年6月、妻の恵美子さんを病気で亡くしました。35年間、夫婦で参加していた郡上おどり。(柴田勝さん)「『(中止の年)今年は郡上おどりがないでな』と言って、(妻が)うちで1人で踊っていた。郡上おどりは、俺のおっかあにしたら一番大事だったから、(自分が)元気なうちは、こうやって通おうと思っとる」
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そしてもう1人。郡上市に住む西村祐希さん、27歳。(西村祐希さん)Qおじいちゃんはどこにいた?「あの白髪の人がいる所にいました。もう亡くなったので上れないですけれど、ずっと歌っていましたね」
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西村さんの祖父、後藤直弘さんは今年5月、天国に。50年以上、郡上おどりのお囃子を担当していました。
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生前の後藤さんは、こう話していました。(3年前の後藤直弘さん)「日常の習慣が全く抜けてしまった」開催中止になった3年前、後藤さんは踊りを絶やしてはならないと、無料のライブ配信に挑戦しました。
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しかし、完全復活を前に病で帰らぬ人に。享年85。(後藤さんの孫 西村祐希さん)「郡上おどりが通常開催できることは喜ばしいことだし、夏が戻ってきたなという感じだけれど、おじいちゃんがいないのは、心に穴が空いたような物寂しさ。本当に誇らしかったです。本当に自慢のおじいちゃんでした」
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響き渡る下駄の音と、唄と三味線と…。“郡上の夏”が、戻ってきました。おどり収めは9月9日です。