銅線泥棒続出!?

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8月2日(水)放送後記
猛暑でエアコンを使う時期、太陽光発電の施設もフル稼働ですが、その全国の太陽光施設で、近年、盗難被害が相次いでいるようです。詳しいお話しを、山梨県の北杜市役所 環境課長の中山由郷さんに伺いました。
山梨県の北杜市役所 環境課長の中山由郷 さん昨年の12月の4日と、翌日の5日にかけましてですね、被害に遭ってます。本市は公営でメガソーラーを運営しておりまして、売電収入を得ているところです。パネルには多くの電流を流すために銅線ケーブルが大量に使われておりまして、パワーコンディショナーへ送るような役割をしています。この銅線ケーブルをですね、3000メーターくらい、ケーブルカッターで切断して、そのうち1500メーター程度を持ち去られたといったような状況です。再調達価格で申し上げますと約1800万円程度。全部直すということになりますので、敷き直しの工事、売電できなかった期間の損失を合わせますと、およそ9000万円程度の被害と考えています。かなり痛手ですね。
山梨県、北杜市の太陽光発電所で昨年、銅線ケーブルが盗まれた事件。こちらの施設ではケーブル自体は地上から見えない構造になっていた。地下に埋設されており、所々にマンホールが設置されており、そのマンホールが引き上げられてケーブルを引き抜かれていたそう。
残されたケーブルを実際持ち上げてみたと言う中山さんですが、かなり重く、この重さでこの長さのものを運ぶのには1人2人では難しい、何人かのグループによる犯行ではないか、しかも車も用意されていたとの警察からの方向もあり、かなり計画的な犯行だったと見られている。
この「銅線盗難被害」は、各地で相次いでいます。山梨だけでなく、埼玉や茨城、またここ最近で言うと、4月には栃木県、6月には宮城県などでの盗難被害も報道されています。
ではなぜここ最近こんなにも「銅線盗難被害」が相次いでいるのか。その考えられる背景について、専門家に話を伺いました。国際経済に詳しい七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友さんのお話しです。
七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友さん元々銅というのは非常に安価で加工性に優れて、電気を通しやすいということで、幅広い産業に使われているんですが、ここ2、3年の間にコロナ禍での物流の混乱ですとか、リモートワークなどによるデジタル関連の需要の増加、ロシアのウクライナ侵攻による世界的な資源価格の上昇、円安の進行と、こういったことによって円ベースの輸入物価が上がっておってですね、2020年の平均と比べてピークで2倍ぐらいになったと。足下でも高止まりしているといった状況です。このところのキーワードとしては脱炭素社会。脱炭素を進めるための電気自動車ではですね、モーターのコイルなどに使われるということがあります。これが最近、需要が急増して今後伸びていくということが考えられますので、銅需要はますます増えていくということが見込まれます。
2020年と比べても一時は2倍以上の価格となり、今も高止まりが続いている状況。特に近年の社会の動き、『脱炭素社会』に向けた幅広い需要もあり、例えば、再生可能エネルギーの設備やインフラ、海底ケーブルのようなものにも使われ、今後も中長期的にも需要の増加が見込まれるそう。特に、電気自動車のモーターのコイルに関して言うと、普通のガソリン車に比べて銅が使われる量は4倍!!!
カーボンニュートラル実現は2050年とか2060年と言われていますが、先々中長期的に進めていく中で2050年には世界の銅需要は、今の倍ぐらいになるということが言われているそう。それに対して同鉱山からの供給はそれに追いつかない水準になっている。様々なリサイクルの優等生と言われてる銅をリサイクルしても、需要が追いつかず、今後も上昇する可能性が非常にあると。
オリンピックの金銀銅メダルは、希少性や価格でこの順位となっていますが、この先銅の需要が伸び続けて希少金属になれば銅メダルの順位が変わる可能性も!?とおっしゃっていました。
それほどまでに需要や価格の上昇が今後も見込まれてる「銅」。そうなってくると盗難被害の増加も心配なところですが・・・その辺りについても再び田口さんに伺いました。
七十七リサーチ&コンサルティング 田口庸友さん銅の転売にはですね、いわゆる古物商といった資格も許可も要らないということもあってですね、盗まれたものなのかどうかって出所がわからないという、そういう転売市場が出来上がってしまうということがあると思いますので、盲点を突くような形でこのような盗難被害が発生してということもあるのかなというふうには思いますし、今後ますます需要も価格も増えて上がっていくということが見込まれる中でですね、やっぱり何らかの規制であったり対策といったものは必要になりますが、防犯に係るコストというのは、我々の最終製品の価格に乗せられると、いうことになるのも非常にですねこれも痛し痒しだと、いうことがありますので、やっぱり何らかの対策を早めに打つ必要あるのかなというふうに思います。
転売目的の盗難被害は今後も増えるだろうと田口さん。中山さんもおっしゃっていましたが、太陽光発電所は基本無人で人目につかない所が多いのも被害に遭う原因かもとおっしゃっていました。そのために盗難や対策にコストをかけなくてはいけない所も多くなると思いますが、それが巡り巡って消費者の負担になる可能性もある・・・と田口さんの見解でした