〈閲覧注意・歌舞伎町ネズミ大発生〉ネズミVS新宿区! 予算1229万を使った駆除作戦は成功するのか? 町の住人は「もう慣れた」「たいして気にしていない」と楽観的だが噛まれた人は…

今年5月、新宿区歌舞伎町のゴミ置き場に30匹を超えるネズミが群がっている様子を撮影した動画がSNSで拡散され、全国から苦情がくるようになったとして、同区役所は9月12日、歌舞伎町に出没するネズミの環境調査・一斉駆除に乗り出すと発表した。今後は11月ごろの調査開始を目指して、関連経費約1229万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提出するという。一連の発表を受け、”歌舞伎町の住民たち”はなにを思うのか。その実態を調査した――。
新宿区歌舞伎町のある通りで、ビルの階段下に積まれているゴミ袋に、灰色のネズミが群がり、争うようにゴミを漁っている――。この14秒ほどの動画がSNSで拡散されたのは、今年5月のこと。新宿区保健所衛生課の担当者によると、こういった”歌舞伎町でのネズミ動画”がネット上で出回ったことで、区民のみならず、全国からネズミの苦情が相次ぐようになったという。
歌舞伎町(撮影/集英社オンライン)
「ネズミが群がっている様子や、わざとコンビニ弁当をあげる動画がSNSで話題になった影響で、今まではネズミを見かけたという当事者の苦情や相談だけだったのが、動画をご覧になられた方から全国的に苦情がくるようになりました。私たちの部署だけでなく、ゴミに関する部署や広報などにもそういった心配の声が届くようになったのと、元からゴミ捨てに関しての相談もあったため、重点的に対策を行なうことにしました」対象地域は、歌舞伎町1丁目と2丁目の繁華街エリア。まずは委託業者が不適切なゴミ出しをしている場所や巣穴を調査して、とくにひどい場所に関しては「殺そ剤」を撒いたり、「ゴミの対策」を強化していくという。「歌舞伎町に生息するドブネズミが『どんな菌をどれだけ持っているか』までは個体差もあるので解明されていませんが、糞尿や死骸から感染症のリスクも考えられます。まだ発症の報告などはありませんが、『レプトスピラ』という感染症などが危険視されていて、これに感染すると急性の熱が出て、悪化すると腎臓障害にもなりかねません」 (同上)
新宿区役所(撮影/集英社オンライン)
新宿区は11月ごろの調査を目指し、今月21日に行なわれる区議会に、関連経費約1229万円を盛り込んだ一般会計補正予算案を提出するという。一連の発表に、”歌舞伎町の住民たち”はなにを思うのか――。
9月14日の夜から朝にかけて、歌舞伎町で働く人たちにインタビューを実施したところ、「ネズミのことはたいして気にしていない」「対策してもどうせいなくならないでしょ」といった意見が大半を占めた。その心境を紹介する。「歌舞伎町で路面店を開いている人の大半はネズミが店の前を通りすぎるのは当たり前で、それこそ『朝起きたら歯を磨く』くらいのレベルですよ。実際、ウチにも深夜になるとネズミが侵入してくることもしょっちゅうだし、観光客の方なら驚くかもしれないけど、常連さんはまったく気にしない。新宿区役所はネズミの対策に力を入れるって言ってますけど、全滅させるなんて不可能でしょう。だって歌舞伎町って、ビルにゴミ捨て場がなくて『各々でゴミ収集業者と契約してください』ってところも多いので、店の前にテキトーにゴミ袋を置いてるから、そこがネズミの巣窟になってる店もあるんです。いくら対策しようと根本的な解決は無理で、税金の無駄ですね」(バー店主・30代男性)「とくにネズミが多くなるのは、夜の10時ごろから朝方にかけて。2、3日に一度はここ(無料案内所)に入ってきますけど、放っておけば勝手に出ていくし、そんなの日常茶飯事って感じ。でも、さすがに『気持ちわるっ!』って思うのは、早朝の歌舞伎町かな。『TOHOシネマズ』の前によくゲロが落ちてるんですけど、それにハトとネズミが群がっているときは食欲も失せますね(笑)。そうやって(新宿区が)ネズミの駆除に力を入れると言ってるけど、ぶっちゃけ『どうせ無理だろう、好きにやってくれ』って感じかな」(無料案内所スタッフ・20代男性)
歌舞伎町のビル脇で溢れたゴミ(撮影/集英社オンライン)
上記のように、今回の新宿区のネズミ対策に関しては「否定的または無関心」の人が圧倒的に多かった。実際、この日も記者が歌舞伎町を歩いていたところ、路上を走るネズミに何度も遭遇したが、ほとんど気に止める人はいなかった――。また、取材を進めるうちにこんな声も聞こえてきた。「多いときはネズミが10~20匹ほど群がっている光景も目にしますけど、私たちは毎日見ているのでぜんぜん驚きません。むしろ、ネズミはゴキブリと違って人に近づいてこないし、モルモットみたいに大きなネズミが『チューチュー』って仁王立ちでネコパンチしながらケンカするときがあって可愛いんですよ(笑)。ネズミ同士でケンカしだすと、キャストのみんなで『可愛いね』って盛り上がります」(コンカフェ店員・20代女性)
ゴミの下を行き来するネズミ(撮影/集英社オンライン)
「田舎(北海道)から出てきて初めて歌舞伎町に来た時は、どこにでもネズミがいて気持ち悪かったですけど、不思議なもんで慣れちゃいましたね。朝の4時台とか酔っ払いがその辺で寝てるじゃないですか。そこに擦り寄ってたり足の上を通ったりとかしてるの見るとクスッと笑えますよね。歌舞伎町で遊ぶ人はもうネズミと共存してるんだなって思います」(キャバクラ店員・20代男性)
楽観的な声が多いが、保健所衛生課の担当者が話していたように、歌舞伎町のネズミはどんな「細菌」を持っているのかわからない。この日も、そういった被害の声は少なくなかった。「そういえばこの前、ここ(歌舞伎町)の知り合いが『真っ白なネズミに噛まれた』と言ってました。そいつヤバいヤツなんで病院にも行かずに放置していたら、だんだんと気持ち悪くなって40度ちかい高熱が出たらしいです。店にネズミが入ってくるのは気にしないけど、噛まれるのだけは勘弁っすよね(笑)」(前述・バー店主・30代男性)「そこのビルの2階に入ってる中国マッサージ店のお姉さんが、『この前ネズミに噛まれたから注射を3回受けるハメになった』とか言ってましたね。たしかにネズミって臆病なので、足音にビックリして10匹ちかく出てくることがあるんですけど、そのときに足にぶつかってきたこともあって、怖いっちゃ怖いですよね」(ガールズバー店員・20代女性)
ゴミで溢れた「トー横」前(撮影/集英社オンライン)
風俗店スタッフの男性(40代)も、ネズミの感染症を恐れるあまり、ふだん食べに行ける店も限られているという。「ここ2、3年の間に、歌舞伎町ではコロナの影響で日本人資本の店が次々と閉まって、そのぶん外国資本の店が増えたんだけど、とうぜん厨房にいるのも外国人ばかりで杜撰なんだよね。キャベツやたまねぎといった野菜を洗ったまま、バックヤードの外に置きっぱなしにしている店もある。あんなのネズミにしたら『絶好のターゲット』に決まってるし、怖くてその店に食べに行けない。感染症の被害が出るのも時間の問題だろうから、新宿区には、徹底的にネズミ駆除をしてほしいね」
話題になったSNSのネズミ動画
吉住健一区長は12日の定例記者会見で「ネズミはさまざまな病原菌を持っている恐れがあり、対策を進めることで安全な街にしていきたい」と語ったが、苦難の道のりが待っていそうだ。※「集英社オンライン」では、自然災害や動植物被害について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected](Twitter)@shuon_news取材・文・写真/集英社オンライン編集部ニュース班