バイク初心者こそ「125ccスポーツバイク」に注目したい理由とは

気軽に所有でき、近場の移動に便利な125 ccクラスのバイク(原付二種=第二種原動機付自転車)。スクーターやビジネスタイプが多かったこのクラスに、本格的な走りが楽しめるスポーツモデルが続々と登場している。

初めてバイクを始める方に、125ccクラスのバイクをおすすめしたい理由を解き明かすとともに、スポーツバイクを楽しむ必要なコトやモノを紹介していこう。
○ついに出荷台数で50ccを逆転

125ccクラスのバイクと言えば、ピンクのナンバープレートが目印。最近このピンクのプレートをつけた車両をよく見るようになった。

気になって調べると、数字にも表れていた。日本自動車工業会が発表した、今年1月から6月までの二輪車の出荷台数を見ると、51~125ccの台数は7万7656台で、50cc以下(原付一種)の4万7810台を上回っていた。筆者が運転免許を取った1980年頃は、バイクの8割以上を占めるほど圧倒的なシェアだった50ccを125ccが上回ったというのは、昔を知るひとりとして驚きだった。

その昔、多くの人が50ccを選んでいたのは、最高速度は30km/hだったものの、普通自動車免許を持っていれば乗れるうえに、ヘルメットが不要だったことが大きい。

しかしその後、死亡事故が増えたことからヘルメットの装着が義務付けられ、交差点で自転車のように二段階右折をすることも義務付けられた。加えて電動アシスト自転車という、運転免許もヘルメットも不要で(現在はヘルメット着用努力義務)ある程度の距離を快適に移動できる乗り物が出てきた。そのため多くのユーザーがそちらに移行してしまったのだ。
○最高速度60km/h、扱いやすいバイク

その点125ccは、独自の運転免許(普通自動二輪小型限定)は必要である代わりに、最高速度は60km/hなので、高速道路には乗れないものの一般道路では不自由を感じることもない。交差点も自動車と同じ曲がり方。つまり路上での扱いやすさは50ccより上だ。
○維持費が安い

一方で車検がないのは50ccと同じ。税金は軽自動車税として年間2,400円、加入が義務付けられている自賠責保険は6,910円(いずれも地域により異なる)にすぎず、任意保険は50cc同様、自動車保険に入っていればファミリーバイク特約でカバーできる。
○燃費の良さも特徴

燃費も良い。スポーツバイクではないけれど、筆者が所有しているホンダ「スーパーカブC125」を例に出すと、リッター50kmを下回ったことはない。車体が軽くエンジンの排気量が小さいおかげだが、自動車ではどう頑張っても届かないリッター50kmを、あっさり出してしまうことに感心した。
○中大型よりも駐輪場が多い

またバイクで出かける際、駐輪場の場所は常に気になるものだ。都市内の駐車場は、かつては少なかったが最近は増えてきたと、ライダーのひとりとして実感している。しかも125ccは、50ccと同じ車格と考えているところもあり、大型バイクより置ける場所が多い。筆者もこの恩恵を受けている。
○上級車に匹敵するクオリティの高さ

それでいてスポーツモデルとなると、マシンの内容はかなり本格的になる。

今年11月に発売されたばかりのヤマハ発動機「XSR125 ABS」は、LEDを採用したヘッドランプやテールランプ、クラシカルなタックロールデザインのシート、各所に配されたアルミパネル、フル液晶の丸型メーターなど上級車並みの装備を採用していることもあり、とにかく立派に見えるのだ。

そして機能も充実。単気筒エンジンは水冷で最高出力は15psと、排気量あたりの出力では兄貴分の「XSR700」を上回るし、トランスミッションがクラッチ付きの6速であるところは共通だ。

モダンなスタイルが好みなら、同じヤマハならフルカウルの「YZF125」、ネイキッドの「MT125」が選べるが、これらも存在感のあるサイズと上質なクオリティを合わせ持っていて、格下感はまったくない。これは125ccのメインマーケットが東南アジアで、現地のライダーにとっては本格的なバイクとしてみなされていることがある。手を抜くわけにはいかないのだ。それがレベルの高さに結びついている。

余裕のあるサイズのおかげで、ライディングポジションには無理がなく、自然な姿勢が取れるし、安定感も高い。おかげで1日100kmレベルの走行も楽にこなせる。このあたりは自転車とは大きく違う部分だ。

それでいて車両重量は137kgと、XSR700より約50kgも軽い。だから15psでも爽快な走りが得られる一方で、心配になりがちな発進や停止も安心して行える。初めてバイクに乗る人はもちろん、筆者のようなベテランにもこの親しみやすさはありがたい。
○楽しむために必要な装備は?

手軽かつ本格的に楽しめる125ccのバイクだが、体がむき出しになるため専用の装備は必須だ。ヘルメットのほかにグローブ、ウェア、ブーツ、バッグなどを揃えることになる。
○安全なヘルメットを選ぶには

ヘルメットは、国が定めた安全基準に適合した証であるPSCマーク、製品安全協会が定めた基準に認定していることを示すSGマーク、日本工業規格に適合していることを証明するJISマークのついた製品を選びたい。

SGとJISには125cc以下用の限定規格が設定されているけれど、スポーツバイクは高性能なので、125cc限定ではないほうが良いと思っている。
○ファッショナブルなウェアも

ウェアについては、プロテクターを内蔵し、乗車姿勢に合わせて袖や背中を長めとした専用の製品を選びたい。最近はファッショナブルなものが多く出回っており、防寒性能も上がっているので、お気に入りの一着に出会えるはずだ。

自転車とはスピードが段違いなので、万一のことを考えればグローブは必須だ。レバーやスイッチがスムーズに扱えるよう、試着して買ってほしい。ブーツもウェア同様、ファッショナブルなものが増えてきた。スポーツバイクは左足の甲でシフトペダルを扱うので、この部分にカバーのついたタイプがふさわしい。
○乗車時のバッグは荷物量に合わせて選ぼう

スポーツバイクはデザイン優先なので、荷物が積みにくい。しかしこちらについても、さまざまなデザインのバッグが出ており、選択肢が増えている。長時間乗る人は、ショルダータイプは風であおられ、リュックは肩が凝ってくるので、荷物の量が少なければ腰に巻くタイプ、量が多い場合はネットなどでシートに固定するのが良いだろう。

最後になってしまったが、これだけ本格的な車格や装備を持ちながら、価格が安いことも125ccの魅力だ。ここで紹介したヤマハの3車種はいずれも50万円前後で、車検がなく燃費が良いことを含めて考えれば、リーズナブルな移動手段と言える。

でもここまで書いてきたように、中身は本物。間口は広いけれど奥が深いのが、125ccスポーツバイクなのである。

森口将之 1962年東京都出身。早稲田大学教育学部を卒業後、出版社編集部を経て、1993年にフリーランス・ジャーナリストとして独立。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。グッドデザイン賞審査委員を務める。著書に『これから始まる自動運転 社会はどうなる!?』『MaaS入門 まちづくりのためのスマートモビリティ戦略』など。 この著者の記事一覧はこちら