[社説]進む土地利用規制 疑問尽きぬ指定 見直せ

土地利用規制法に基づく区域指定は、基地の過重負担にあえぐ県民に、さらなる負担を強いる。安全保障の旗を掲げれば何でも許されるような風潮は極めて危険だ。 同法は、安全保障上の観点から自衛隊・米軍・原発などの重要施設の周囲約1キロと、国境の離島を対象区域に指定し、土地利用を規制する法律で、2021年6月に成立した。 県内では昨年7月、39カ所が指定を受けたのに続き、12月末には21市町村、31カ所が指定候補地として国の審議会に提示された。 指定候補地の中には嘉手納飛行場や普天間飛行場などの米軍施設も含まれる。 規制法に基づいて「注視区域」に指定されると、国が利用状況を調査し、必要があれば関係者の氏名、住所などの個人情報の提供を求めることができる。 施設の機能を損ねる行為(機能阻害行為)に対しては中止勧告や罰則付きの命令を出すことも可能だ。 特に重要な「特別注視区域」に指定されると、一定面積以上の土地の売買に規制がかかり、事前届け出が義務付けられる。 北谷町(アメリカンビレッジの一部を除く)、嘉手納町のほとんど全ての区域が「特別注視区域」に含まれており、影響は深刻だ。 嘉手納町は町面積の約8割が米軍基地で、住民は限られた土地にへばりつくように暮らしてきた。特別注視区域に指定されれば、街づくりへの影響は避けられない。■ ■ 機能阻害行為とは何を指すのか。政府は法制定時、7類型を例示した。だが、法律そのものが極めてあいまいなため、対象となる阻害行為が拡大する懸念が残る。 地域住民の「基本的人権」を脅かし、他地域では許される「自由な経済活動」が大きな制約を受ける。土地利用規制法の危険性は、この2点に集約される。 法案審議の過程で、弁護士や憲法研究者からは「令和の要塞(ようさい)地帯法」との批判の声が上がった。 戦時に吹き荒れた要塞地帯法は、国防上重要な施設のある区域を要塞地帯と指定し、あれは駄目これも駄目、のさまざまな規制を敷いた。 その令和版が土地利用規制法というわけだ。 防衛省は航空機騒音が激しい北谷町砂辺の土地を順次買い上げ、住民の移転を進めてきた。その上、今度は土地利用規制法によって規制の網をかぶせるというのである。■ ■ 安全保障のために沖縄にさらなる犠牲を強いる施策だというほかない。基地維持が優先される構図は復帰前と変わらない。 この法律ができたのは、外国人や外国資本の法人による土地買収への懸念が広がったからだ。 政府は、そのような懸念をうまく利用し、外国人による土地購入を規制するだけでなく、住民を監視対象とするような内容まで盛り込んだ。 個別のケースの中には指定の妥当性が疑われるような事例も少なくない。 計画を見直すべきだ。